退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『非行少女』(1963) / 和泉雅子の代表作は拾い物

神保町シアターの《日活戦後製作再開65周年記念 スクリーンの青春 日活女優図鑑》という企画で映画『非行少女』(1963年、監督:浦山桐郎)を鑑賞する。白黒映画。ヒロインは和泉雅子

15歳の若枝(和泉雅子)は場末のバーで酔っぱらいと酒を飲み、女給のハイヒールを盗んで飛び出していく。一方、東京で失業して帰郷した地元の名士の息子・三郎(浜田光夫)は、無職でわびしい日々を過ごしていた。この幼なじみの二人が金沢の街で再会する。三郎は若枝にスカートを買ってやり、勉強を教えてたりするが……。

青春映画だが、アメリカの試射場をめぐる内灘闘争や貧困問題を正面から捉えて社会派作品に仕上げているところは上手い。養鶏場の迫力のある炎上シーンというクライマックがあり、起伏のあるストーリー展開で映画らしい映画で飽きさせない。

また前年に吉永小百合主演で『キューポラのある街』(1962年)をヒットさせた監督の手腕が発揮されていて、和泉雅子が実力以上の演技を見せている。喫煙シーンは堂に入っているし、方言もよく仕込まれている。和泉といえば、後年の北極帰りの姿がすぐに想起するが、本作のような可憐な時期の作品は新鮮に思えた。

水着やブルマー姿を抑えるなどアイドル映画としてもなかなかの魅力的だ。当時の日活では吉永小百合が突出した存在で、和泉雅子はそのワリを食った女優のひとりだったかもしれない。実に惜しい気がする。

ラストで二人は、若枝が大阪に働きに行く列車のなかで3年後の再会を約束して別れる。まあ青春映画らしい明るいエンディングだが、「これは絶対にうまくいかない」と思ってしまう。青春映画を素直に見るには心がすさんだようだ。