退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【訃報】佐藤忠志さん死去

佐藤忠志さんが亡くなった。名前を聞いても誰だかわからないという人も多いだろう。

hochi.news

80年代、金のアクセサリーをつけた独特の風貌のため「金ピカ先生」の愛称で知られた、かつての予備校のカリスマ英語講師である。タレント活動をしていたのを覚えている人もいるかもしれない。

私は直接講義を受けたことはないが、受験生時代に代々木ゼミナールでカリスマ講師として抜群の人気を集めていたことをよく覚えている。私の記憶が正しければ、主に中堅私大のクラスを受け持っていた。その後、東進ハイスクールに移籍したという話を聞いた。


東進ハイスクール CM 1990

訃報を伝える記事によると、ひとり暮らしで生活保護を受けていたとあり驚いた。全盛期は年収2億を超えていたという情報もあるが、どうしてこうなったのかまでは記事は言及していない。

68歳だったいう。まだ若いとも言えない年齢だが、いまの日本の平均寿命を考えると十分長生きしたとも言えない。彼にとってどんな人生だったろうか。「太く短く生きた」とも言えるが、悔いはなかったのだろうか。

かつての予備校では人気講師の講義を受けるために席取り競争があるのが普通だった。それがいまはオンデマンドでネット経由で講義が受けられる時代になり隔世の感がある。

受験生にとって予備校講師はカリスマであり、有形無形の影響を受けた受験生も多いだろう。しかし大学に進学してわかったのは、受験生時代には眩しく見えた予備校講師も決して安定した職業ではなく、いわばヤクザな職業であるということだ。それだけに高校教師とはまったくちがった話が聞けたのだろう。

いまでも、かつてのようなカリスマ講師がいるのかわからないが、受験生時代という精神的に不安定な時期に、予備校講師の影響を受けた人は多いはずだ。そうした人のことは時を経ても忘れないが、私の場合、すでに他界している人も多い。時の流れははやい。

佐藤さんの講義を受けたり参考書は使ったりすることはなかったが、受験生時代のシンボルだったことは間違いない。冥福を祈りたい。昭和は遠くなるばかりだ。

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