退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

朝ドラ「なつぞら」見終わりました

朝ドラ「なつぞら」は、2019年上半期放送のNHK連続テレビ小説」第100作の記念作品。脚本は大森寿美男(作)。ヒロインは広瀬すず

戦争で孤児となった少女・なつは、十勝の大自然のなかで開拓者精神に溢れたたくましい大人たちに育てられる。やがてなつは、上京し草創期のアニメーション業界でアニメーターを目指すようになる。

北海道・十勝の広大な自然がよく撮れていたのは素晴らしい。子役が演じてた少女時代はとくによかった。なつが成長して乗馬姿の広瀬すずで登場するあたりまでは期待以上の出来栄えだった。最終回に家族3人で十勝の平原に立つ姿で終わるのもいい画だった。

しかしアニメーターを目指して上京してからは一気に失速したように思う。ヒロインが着せ替え人形のように衣装をとっかえひっかえして、乳揺れを見せつける一部の好事家のための演出はいいとしても、草創期のアニメーション業界が十分に描けていないは不満。

草創期のアニメーション業界はもっと濃密で混沌としていたはず。朝ドラでは限界があるのだろうが、登場人物の色恋沙汰を描くの汲々としているばかりであまり面白くない。実際のアニメ作品の代わりに登場する劇中のアニメも雑で見ていてげんなりした。また実際のイベントをなぞるのであれば東映動画(劇中では東洋動画)の労働争議は外してほしくなかった。

さらに、なつの夫となる高畑勲に当てた坂場一久(中川大志)がいまひとつ冴えないのも不満。もっとインテリで理性的な人物設定でストーリーの前面に出てきてほしかった。

アニメ業界を中途半端にしか扱えないのなら、ヒロインはずっと北海道で過ごしていたほうがよかったのではないか。最近の朝ドラは田舎からすぐに上京するが、その必要があるのかいつも疑問に思う。

また、本作は朝ドラ第100作の記念作品として歴代ヒロインが何人も出演した。重要な役で出ていたのは、山口智子松嶋菜々子比嘉愛未貫地谷しほりの4人。他にも1回だけ登場した旧ヒロインも何人かいて、お祭りみたいで楽しく見れた。個人的にはのん(旧:能年玲奈)の出演を期待していたが実現しなかったのは残念。

かつては朝ドラ出演が若手女優の登竜門のようになっていたが、最近ではすでに実績のある女優がヒロインに抜擢されるケースが多いようだ。これは今回の広瀬すずにも当てはまるし、次の朝ドラ「スカーレット」のヒロインの戸田恵梨香はすでに中堅と言ってもいい。

NHKの朝ドラヒロインぐらいは新人発掘の場であってほしいと思うが、最近の視聴率重視の風潮のなかでは難しいのだろうか。朝ぐらいは初々しいヒロインが見たいものである。

なつぞらメモリアルブック(ステラMOOK)