退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

BS時代劇「新選組血風録」(2011年)がよかった

撮りためた録画番組を消化するなか、先日再放送されていたBS時代劇新選組血風録」(全12回)を鑑賞。原作は司馬遼太郎の短編小説集。主演は永井大。これが意外よかった。

永井大演じる土方歳三を中心に、近藤勇宅間孝行)や沖田総司(辻本祐樹)たち新選組の興亡を描く。「鬼の土方」と異名をとる近藤が隊士たちに厳しくあたり、次々に隊士が死んでいくが陰惨なドラマではない。若手を中心の配役によりフレッシュな「新選組」に仕上がっている。

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新選組モノの醍醐味は内部での権力闘争(内ゲバ)だろう。このドラマでも、勃興期の芹沢鴨豊原功補)と円熟期の伊東甲子太郎鶴見辰吾)と対立する内紛に話数を割いてドラマのヤマ場になっている。

芹沢鴨一派との争いでは、芹沢鴨の情婦・お梅に井上和香に注目したい。お色気シーンがあるかと期待させるが、肩や背中も見せない鉄壁のガードでがっかり。しかも京言葉もかなりあやしい。なぜキャスティングされたのかさっぱりわからない。ラストは土方一派に襲われた芹沢に刺殺されてあっけなく退場するが、いまみるとその容姿は不思議に目を引く。

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このドラマの本質ではないのかもしれないが、新選組の面々がどのような日本をつくろうとしていたが見えてこないところは不満。そうしたビジョンなど持たなかった戦闘集団だったのかもしれないが、ドラマで政治的・思想的な背景についての説明がなく、明治維新へ向かう歴史の流れが感じられない。

ラストは京を追われた新選組隊士次々に死んでいき、ついに土方も函館で戦死するというお馴染みエンディングである。

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この「新選組血風録」は何度も映像化されていて、とくに1965年にNETで放送された、栗塚旭土方歳三を演じたテレビドラマ(1965年版)は有名だが、映画とちがい昔のテレビドラマは見る機会が少ないのは惜しい。

余談だが新選組といえば、2004年の大河ドラマ新選組!」もよく知られている。三谷幸喜の作家性が強く出た異色の大河ドラマだった。いま政界で話題になっている「れいわ新選組」を率いる山本太郎が、原田左之助役で出演していたことも記憶に新しい。党名もこの大河ドラマからとったものだろう。