退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『青春の蹉跌』(1974) / 70年代後半の閉塞感を切り取った奇跡の映画。さよならショーケン

国立映画アーカイブの《逝ける映画人を偲んで2017-2018》という恒例の追悼企画で、映画『青春の蹉跌』(1974年、監督:神代辰巳)を鑑賞する。先日の新文芸坐で行われた萩原健一追悼企画では上映されなかったので足を運んでみた。原作は石川達三の同名小説。

《逝ける映画人を偲んで》はフィルムセンター時代から続く恒例の企画だが、今回の上映は萩原健一の追悼ではない。フライヤーには、音楽の井上堯之檀ふみの母親役を演じた上月左知子(元・宝塚歌劇団上月あきら)が追悼する方々としてリストされていた。

この映画は、何度も見ているが「奇跡の映画」と呼びたくなる青春映画の傑作。日活ロマンポルノの鬼才・神代監督が東宝に招かれ、脚本に長谷川和彦、音楽に井上堯之がスタッフに名を連ねている。さらにショーケンこと萩原健一桃井かおりの演技が加わり、奇妙な化学反応を起こして不思議な雰囲気を醸し出している。

「えんやーとっと」と何を考えているかさっぱりわからないショーケンもよいが、本作で注目したいのは桃井かおり。だらしない喋り方とけだるいアンニュイな雰囲気は彼女だけの持ち味。すごい個性。最近の女優はとんと脱がなくなったが、本作の桃井は思い切りよく脱いでいるのもよい。このボディなら檀ふみでなくて桃井かおりを選ぶのも納得。

ショーケンは司法試験に合格し、上級国民の娘(檀ふみ)と婚約し、これから順風満帆の人生を歩むかに思われた。そんななかセフレの桃井が妊娠してややこしいことになる。ショーケンはついに邪魔になった桃井を殺害して、自らの身を滅ぼすという話。

ラストで桃井が妊娠していたのは他の男の子どもだったことがわかり、その後、アメフトの試合中に首の骨を折れるSEのあとに、エンドロールになだれ込む演出は見事。最初見たときに衝撃を受けたことをいまも覚えている。劇中、手を変え品を変え繰り返し流れるテーマ音楽の旋律も強烈な印象を残す。


青春の蹉跌テーマ  井上堯之

一度は見ておきた映画だが、これまでDVDが発売されていなかったのは意外。ショーケンの追悼企画なのか、本作を含む神代辰巳監督作品がDVD発売される模様。神代辰巳監督が再評価されるとうれしい。

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