退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『竜馬を斬った男』(1987) / 萩原健一の役への思い入れが伝わる傑作

先月、萩原健一の追悼番組としてBSで放送された映画『竜馬を斬った男』(1987年、監督:山下耕作)を録画で鑑賞する。早乙女貢の短編小説の映画化作品。

坂本龍馬を斬ったの人物が誰かすぐに答えられる人は相当の幕末マニアではないだろうか。本作は幕末期に京都見廻組を率いた佐々木只三郎の半生を描く。会津藩士の三男に生まれ、旗本に養子に入った経歴を持つ。ただのテロリストかと思っていたが、まっとうな幕臣だった。

幕末期、旗本・佐々木只三郎萩原健一)は、八重(藤谷美和子)と祝言をあげて間もなく、京都見廻組組頭として京に赴く。池田屋騒動の翌日、只三郎は坂本龍馬根津甚八)と出会い、初めて会ったのにもかかわらず不思議な魅力を感じる。しかし、只三郎は老中から殺傷連合を企てる首謀者の竜馬の暗殺を命じられるが……。


竜馬を斬った男(予告)

劇中、只三郎は「幕臣きっての剣客」として登場する。剣客と呼ばれるだけあって、只三郎は剣の達人で迫力ある殺陣を存分に見せてくれ、時代劇ファンとしての満足度は高い。只三郎を演じる萩原健一も役に入れ込んで熱く演じている。演技力というより地に近いのだろうが魅力的ではある。

一方、島田陽子と中村れい子という私の好きな女優が配されているわりには、色恋沙汰はうまく描けていない。只三郎を慕う芸妓役で島田陽子が起用されているが、まったく京女らしくないのは難点だし、中村れい子はもっと思い切りよく脱いでくれればいいのにと、いろいろと惜しい。

新選組モノと同様に、最期は戊辰戦争に参戦中に敵兵に撃たれて致命傷を負うといういつものパターンである。屋根の上から部下たちに激を飛ばしているなか、撃たれるシーンはショーケンらしくてちょっとよい。夫・只三郎の訃報を知って、妻・八重が江戸から早駕籠で駆けつけるが、京に着いたのは只三郎の死後半月後だったいう。八重が早駕籠を走らすシーンで終わるのもなかなか味がある。

竜馬を斬った男 [VHS]