退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】川島蓉子・糸井重里『すいません、ほぼ日の経営。』(日経BP、2018年)

糸井重里さんが率いる「ほぼ日」の経営について、糸井さん自身が語ったインタビュー本。私自身が今春から「ほぼ日手帳 weeks」を使い始めたこともあり読んでみた。

すいません、ほぼ日の経営。

すいません、ほぼ日の経営。

学生時代に『ヘンタイよいこ新聞―月刊ビックリハウスより』を読んでいたときから、すごい人がいるんだなと思っていたが、いつのまにか社長になっていて、さらに上場までしていたので驚いた。

長い間、フリーランスで活躍してきた糸井さんが、ある時期に限界を感じて事業所を立ち上げて「環境」をつくりあげていく過程は興味深い。人事、組織、事業、社長、上場といった話題に対して、ユニークな持論を展開している。

とくに「やさしい」ことは先にくるが、「つよい」ことも必要だというのは企業は事業を継続しているためには当たり前のことだが、実際に抜群の収益性を叩き出しているところがすごい。

まあ経営理論で理詰めで導かれた経営手法ではなく、糸井さんならでは「経営」なので、読み物としては面白いが、そのまま参考にはなることは少ないだろう。普遍性は乏しいように思う。事業継続性について、糸井さんは自分がいなくてもまわる組織を目指すと言っているが、実際はどうなのだろうと考えてしまう。

だだし、こうした組織で働いたら面白いだろうなと思わせるのは確か。人材不足が叫ばれるなか、社員募集をかけると応募者が殺到しているようだ。社員採用のプロセスの一端が覗けるのも面白い。今後はこういう会社が生き残るかもしれないが、一般企業が取り入れるのは難しいだろう。

さて、本当はインタビュー本は苦手なのだが、この本は糸井さんの語り口が活かされてスイスイ読めた。インタビュワーによる各章もまとめも理解の助けになって有用だった。「ほぼ日手帳」ユーザーは、手帳がどんな会社で作られているのか覗いてみるのも楽しいのではないか。


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