退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『ザ・パッセージ/ピレネー突破口』(1979) / B級ナチス映画の枠にとどまらない戦争映画の佳作

新文芸坐の《魅惑のシネマ・クラシックスVol.32》で、映画『ザ・パッセージ/ピレネー突破口』(1979年、監督:J・リー・トンプソン)を鑑賞。イギリス映画。初見。

ナチス占領化のフランス。ユダヤ人科学者ベルグソン(ジェームズ・メイソン)の一家は、スペインへの脱出を計画する。スペイン・バスク地方に住む羊飼いの老ガイド(アンソニー・クイン)に道案内を依頼して雪のピレネー山脈を突破しようとするが、親衛隊将校(マルコム・マクダウェル)は異常な執念を燃やして彼らを追う……。


The Passage (1979) ORIGINAL TRAILER

かつて第二次世界大戦を舞台にした戦争映画が量産された時期があった。そのブームを下火になるなか、往年の名監督J・リー・トンプソンが撮った戦争映画。雰囲気はB級ナチス映画だが、なかなかの完成度で楽しめる。フランス国内からピレネー山脈までの逃走劇をテンポよく撮りきった手腕はさすが。主演アンソニー・クインもかつて戦争映画で活躍した俳優である。

ベテランも頑張っているが、この映画はなんと言っても追手である親衛隊将校マルコム・マクダウェルに尽きる。ベルグソンの行き先を白状させるためにレジスタンスを拷問したり、ジプシーを椅子に縛り付けてガソリンをかけて火あぶりにしたり、残虐ぶりを遺憾なく発揮している。さらにベルグソンの娘を裸にひん剥くサービスシーンもあり。下はオリジナルのポスターの双眼鏡の左目に注目。

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マルコム・マクダウェルの怪演が突出しているためB級映画に思われがちだが、最後まで観ると正統派の戦争娯楽映画だとわかる。初めてみたがなかなかの拾いモノだった。

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