退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

朝ドラ「おひさま」見終わりました

朝ドラ「おひさま」は、2011年上半期放送のNHK連続テレビ小説」第84作の作品。脚本は田惠和(作)。主演は井上真央。震災後の最初の朝ドラとして記憶に残っている人も多いだろう。

信州・安曇野市松本市を舞台に、戦前、戦中、戦後の激動の昭和期を生き抜いた須藤陽子(井上真央)の半生を描く。ひとりの女性の半生に戦争期を絡ませる朝ドラの王道と言える脚本。

主人公が尋常小学校(戦時中は国民学校)の先生になり、子どもたちと交流を深めるのは「二十四の瞳」のようでありきたりだが悪くない。あと「白紙同盟」の仲間たち(満島ひかり、マイコ)との友情もよく描けている。最終回で現代の「白紙同盟」(若尾文子黒柳徹子司葉子)が集うサプライズも楽しい。

第11回 乙女の祈り

あまり起伏のない筋立てで淡々と進行していくには賛否があるだろうが、落ちついて見れてよかった。故郷の信州に根付いているのもよい。最近の東京制作の朝ドラの主人公はすぐに上京してしまうのはどうしたものか……。

オーソドックスな朝ドラだが、現代の陽子(若尾文子)は主婦の房子(斉藤由貴)を相手に回想する形式でドラマが進行するのは新しい。この回想形式が必要なのかという議論もあるが、若尾ファンを自称する私としては大歓迎。若尾はナレーションも担当していて、独特の声質を堪能できる。願わくば、房子の子どもたちも「百白花」を訪れて陽子と絡んでほしかった。

個人的に刺さったのは、戦後、陽子が初恋の相手と再会する場面。長兄・春樹(田中圭)の旧制高校時代の親友で、戦前に満洲に渡った陽子の初恋の相手・川原(金子ノブアキ)が、敗戦から5年後、ボロボロの姿になって陽子の前に現れる。川原は満洲でパートーナーを亡くし、空襲で甲府の実家と家族全員を失っていた。二人は言葉を交わしそのまま別れ、川原はその後登場しないが心に残るシーンである。

第127回 ふたたびの場所

あと次兄・茂樹(永山絢斗)が、戦後、医者になって須藤医院を開業することを決心するのもちょっといい。医学部受験に失敗を続けて、ようやく陽子の娘と同じ年に大学生になるとナレーションがあった。「どんだけ浪人したんだよ。多浪生はダメだろ」とツッコミを入れたくなったが、まあ最後だからいいだろう。

余談だが、「おひさま」はAbemaTVで配信されたのをきっかけに見始めたが、途中でピエール瀧のスキャンダルのせいで配信中止になった。そこでAmazonプライム・ビデオで続きを見たが、いまだに配信中止とした対応には疑問が残る。