退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

岡田准一主演・テレビドラマ『白い巨塔』(2019年)の感想【番外編】

テレビ朝日開局60周年記念 5夜連続スペシャルドラマ『白い巨塔』を見ました。主演は岡田准一。原作は山崎豊子の長編小説。これまで前編、後編と感想を書きました。

これまで幾度も映像化されている作品で、1978年の田宮版、2003年の唐沢版がよく知られています。今回はこれら旧作を含めてキャスト一覧を眺めてみたうえで、とくに岡田版では存在感が薄かった女性陣のなからか何人が取り上げて思いを書いてみたいと思います。

キャスト一覧

今回の岡田版の番組サイトのキャストのページを起点にして、唐沢版、田宮版のキャストを並べて表にしてみました。

役名 岡田版 (’19年) 唐沢版 ('03年) 田宮版 ('78年)
(主要人物)
財前五郎 岡田准一 唐沢寿明 田宮二郎
里見脩二 松山ケンイチ 江口洋介 山本學
花森ケイ子 沢尻エリカ 黒木瞳 太地喜和子
東貞蔵 寺尾聰 石坂浩二 中村伸郎
浪速大学
鵜飼医学部部長 松重豊 伊武雅刀 小沢栄太郎
大河内教授 岸部一徳 品川徹 加藤嘉
柳原医師 満島真之介 伊藤英明 高橋長英
佃医局長 八嶋智人 片岡孝太郎 河原崎長一郎
亀山君子 美村里江 西田尚美 松本典子
野坂教授 市川実日子 山上賢治 小松方正
(財前家)
財前又一 小林薫 西田敏行 曾我廼家明蝶
財前杏子 夏帆 若村麻由美 生田悦子
黒川キヌ(きぬ) 市毛良枝 池内淳子 中北千枝子
(東家)
東政子 高島礼子 高畑淳子 東美恵子
東佐枝子 飯豊まりえ 矢田亜希子 島田陽子
(東都大学)
船尾教授 椎名桔平 中原丈雄 佐分利信
(佐々木家)
佐々木庸平 柳葉敏郎 田山涼成 谷幹一
佐々木よし江 岸本加世子 かたせ梨乃 中村玉緒
佐々木庸一 向井康二 中村俊太 中島久之
(弁護士)
関口弁護士 斎藤工 上川隆也 児玉清
国平弁護士 山崎育三郎 及川光博 小林昭二


若い人にとっては1978年の田宮版の出演者たちは馴染みがないかもしれませんが、日本映画の黄金期を支えた名優揃いで錚々たるものです。

注目したいのは女性陣ですね。医学部を舞台したドラマの表舞台を飾るのは医師たち男性陣ですが、これに関わる女性陣との関係性がドラマを重層的にしています。今回の岡田版では尺の都合もあり、女性陣の出番が少なかったのが残念でした。

女性陣のなかから3人の登場人物を取り上げてみます。

花森ケイ子(財前吾郎の愛人)

岡田版では沢尻エリカ様が演じていてドラマのヒロイン的存在です。たしかに「いいオンナ」然としたビジュアルで、医療系の堅苦しいドラマのなかで際立った存在感をみせています。しかし女子医大中退という設定のわりには知的な印象はなく、キャバ嬢あがりのような雰囲気はどうなのかと思いました。

エリカ様は末期がんの財前に面会して涙する場面はよかったですが、どうしても財前との関係が薄いなと感じてしまいます。ケイ子は財前にとってはただの愛人に留まらず、人生のパートナーであってほしいものです。

その点では田宮版の太地喜和子は絶品でした。財前の実母を、京都案内したり岡山の病院に連れて行ったりするエピソードがあり、財前との信頼関係が十分に描かれていました。ケイ子と愛人関係になったことだけでも人生を大いに謳歌したと言えるのではないかと思わせるほどでした。

白い巨塔(1) [VHS]

東政子(東教授夫人)

岡田版では高島礼子が演じていますが出番が少なくて残念。旧作では東教授を尻に敷くような勢いで医療裁判に関わることに強く反対します。岡田版では、東に対して「深入りをしないで下さいね」とソフトに制する程度で物足りません。

ちなみに田宮版では国立大学教授夫人としての選民意識をむき出したり、看護婦をあからさまに差別したりしています。いまの時代、コメディカルの立場も向上しているのでこうした発言はできないでしょうが、毒が足りなくてドラマ的には面白味に欠けます。

東佐枝子(東教授の令嬢)

ドラマのヒロインは花森ケイ子ですが、東佐枝子も美人枠として貴重。旧作では島田陽子矢田亜希子が演じて男性ファンを魅了しました。とくに田宮版の島田陽子は本当に美しかった。ちなみに田宮版の佐枝子はラストで、両親に反発するよに東教授の教え子でネパール在住の医師のもとに嫁ぐために渡航します。

岡田版では佐枝子を飯豊まりえが演じています。たしかに美人ですが出番が少なくて存在感に乏しい。ラストでは、唐突に「自分探しの旅」に出かけるのも謎です。親のカネで何やるつもりなのか……。なんだかな~。

まとめ

岡田版は尺が短いこともあり、複雑な人間関係を描くことができなかったのが残念でした。その影響をもっとも受けたのは、本筋に出番が少ない女性陣です。

しかし女性陣と本筋に登場する主要人物との関係をきちんと描いてこそ、ドラマに厚みがでるというものです。やはり原作の持ち味を活かすには尺が短く、企画そのものに無理があったというべきでしょう。