退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想』『大統領の陰謀』(1976) / ウォーターゲート事件を題材にした社会派映画の傑作

新文芸坐の《魅惑のシネマ・クラシックスVol.31 ワーナー・ブラザース シネマ フェスティバル PART5》という企画で映画『大統領の陰謀』(1979年、監督:アラン・J・パクラ)を鑑賞。ウォーターゲート事件ニクソン大統領を辞任に追い込んだふたりのの若き新聞記者の姿を描いた社会派映画。

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首都ワシントンのウォーターゲートビルの民主党全国委員会本部に侵入した5人組が逮捕された。単なる強盗と思われた事件だったが、ワシントン・ポストの二人の若手記者、ボブ・ウッドワードロバート・レッドフォード)とカール・バーンスタイン(ダスティンン・ホフマン)は、共和党ニクソン大統領再選本部との関係を突き止めて追跡取材を始める。徹底的な取材の結果、政府を巻き込んだ陰謀の全容が姿を現してくる……。


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アメリカではジャーナリストが活躍するこの手の映画がよく作られているが、この映画も「ペンは剣よりも強し」の典型例といえよう。社会派映画ではあるが、まったくもって地味な映画だ。ひたすら二人の地道な取材が続く。映画では権力側からの直接の圧力もなく、カーアクションやガンアクションもない。また二人の前に美女が登場するわけでもない。

このように地味な映画だが、当時の人気俳優ダスティンン・ホフマンとロバート・レッドフォードが主演していることで、なんとか興行的にバランスしているのだろう。脚本がすばらしいし、緊迫した画面構成など映像的は面白い。娯楽映画としてかろうじて成立している。

しかしウォーターゲート事件に関連する人物が多数登場して、観客はそれを追いかけるだけでもたいへんだ。当時の観客はウォーターゲート事件をよく知っているだろうということを前提にしているようだ。またアメリカ大統領選挙の制度や政治状況など最低限の予備知識を要求される映画でもある。アメリカ政治史の勉強になる映画ともいえる。

ラストでニクソン大統領が再選されたニュースがテレビで報じらるなか、二人の記者がタイプライターを打ち続けているなか、テロップでニクソン大統領が辞任に追い込まれることが伝えられる。かつてよくあった思わせぶりなエンディングである。

ニクソン大統領を辞任に追い込んだのはジャーナリズムだったのか、それとも司法だったのか、この映画ではほとんど語られてない。二人の記者がウォーターゲート事件の真相解明に寄与したことは確かだろうが、どの程度インパクトがあったのかあまり伝わってこないのは不満である。

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