退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『ベルリン・天使の詩』(1987) / ヴィム・ベンダース監督の奇蹟の映画

早稲田松竹で映画『ベルリン・天使の詩』(1987年、監督:ヴィム・ヴェンダース)を鑑賞。先日死没したブルーノ・ガンツ (Bruno Ganz, 1941-2019)の追悼企画。

知と永遠を司る守護天使のひとり、ダニエル(ブルーノ・ガンツ)は、何世紀もの間、人間の営みを上空から寄り添うように見守っていた。ある日、ダニエルはサーカスの踊り子マリオン(ソルヴェイグ・ドマルタン )と出会い恋をする。ダニエルは親友カシエル(オットー・ザンダー)に永遠の生命を捨てて人間になりたい、と打ち明ける。やがてダニエルは人間になってベルリンの街に降り立つが……。

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原題は、Der Himmel über Berlin(ベルリン上空ぐらいの意)というが、東西冷戦下のベルリンが部隊で、天使の世界には「壁」がないが、人間界の地上には「壁」で東西が隔てられているのがポイントだろうか。映画が公開されたのは1987年で、1991年のベルリンの壁崩壊までもう少しで、融和ムードだった時代背景にも注目したい。

モノクロとカラーの映像の使い分けが特徴的で演出上も奏功している。堕ちた天使ダニエルがコーヒーをすするシーンが印象的だ。またピーター・フォークコロンボ役でそのまま出演しているのも楽しい。

とても詩的な映画でドイツ語の美しさが活かされている。見るたびにもっとドイツ語を勉強していけばよかったと後悔する映画でもある。映像も幻想的で美しい。

この映画は、ヴィム・ヴェンダース作品のなかでは、あまり評価されていないようだが、私のなかでは、「奇蹟の映画」のひとつである。初めて見たときの印象が強烈だったせいもあるが、いまだに時折見直したくなる数少ない映画である。


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なお、この堕天使を主人公とした映画はヒットして、ハリウッドで『シティ・オブ・エンジェル』(1998年)としてリメイクされている。