退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

コミック『東京ラブストーリー』を読了しました

柴門ふみによるコミック『東京ラブストーリー』(文庫版:全3巻)を読んだ。このマンガは1988年から『ビッグコミックスピリッツ』に連載されたのち、1991年にフジテレビ月9ドラマ枠で鈴木保奈美織田裕二の主演により、テレビドラマ化されて大ヒットした。

東京ラブストーリー (1) (小学館文庫)

東京ラブストーリー (1) (小学館文庫)

東京ラブストーリー (3) (小学館文庫)

東京ラブストーリー (3) (小学館文庫)

昨年秋に再放送されたテレビドラマを見てから、原作が気になって“読書リスト”に載せていたがよくやく読んでみようという気分になった。原作を読むのは今回が初めて。テレビドラマはリカ視点だが、原作は完治の視点で描かれているなど、テレビドラマ化に伴いいろいろ変更されている。相違点を確認しながら読むとコミックの映像化の難しさもわかるのではないか。

テレビドラマは映像があるためか、ドラマの背景が気になって「時代」を強く感じた。少し前の東京が舞台なのに、どこか遠い国の話のように思えるほどだ。またテレビドラマの制約だろうが、各話に山場をつくって次回につなげるという脚本もずいぶん窮屈に感じられた。

一方、原作はより時代を越えた普遍性があるように思えた。一言で言えば大人向きだ。人物描写も紙幅をとっていて人間関係が重層的に描かれてリアリティが感じられる。テレビドラマには登場しない、完治の高校時代に自殺した田々井アズサのエピソードも全編通して効果的だし、リカが和賀の子どもを身ごもって完治と別れて、それっきり二人は会わないとういう結末もテレビドラマより好ましく思えた。

コミックを読んでいると、赤名リカと鈴木保奈美が頭のなかで重なるのには自分でも驚いた。テレビドラマ『東京ラブストーリー』は鈴木にとって一躍人気女優になった出世作であることは間違いない。昨年秋にドラマを見直したこともあるが、コミックのキャラクターとドラマの俳優が重なることは、そうそうない体験である。それはキャスティングなのか演技、それとも時代によるものかわからないが、これほど鮮烈な印象を残す「当たり役」というのも稀有だろう。

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