退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

水木しげるの短編漫画「テレビくん」を読んでみた

水木しげるの短編漫画「テレビくん」を読んだ。初出は『別冊少年マガジン』(講談社)の1965年8月15日 夏休み特大号。水木しげるの大手少年誌へのデビュー作。読切り32ページ。

現在、2010年度上半期にNHK連続テレビ小説として放送された『ゲゲゲの女房』をAbemaTVで見ている。ドラマでは『ゲゲゲの鬼太郎』が成功して、水木はすっかりメジャーになっていて、残りわずかというところだ。

このドラマのクライマックスは、貸本漫画業界が衰退していくなか長く苦しい生活を強いられていた水木しげるが、少年誌にデビューして人気を博すことで一気に人生を挽回するところである。ブレイク後、質屋に入れていた質草を一度に取り戻す場面がいい。

短編漫画「てれびくん」は、水木の大手少年誌へのデビュー作であり、まさに水木の転機になった記念碑的作品である。この作品で水木は第6回講談社児童まんが賞を受賞している。

この作品にはテレビの中に現れる少年「テレビくん」が登場する。貧しくテレビのない主人公の少年・三太は学校の「テレビくん」の話題についていけない。ある日、「テレビくん」そっくりの少年・山田が転校してくる。山田の後を付けた三太は「テレビくん」の秘密を知ることになる。

当時、普及し始めたテレビを漫画に取り入れたアイデアも秀逸だし、主人公だけが秘密を知っているというオチも少年読者にウケそうだ。好評だったのもうなずかる。前述のドラマのなかでは、これまでの不気味な画風を変えて、子ども向けの丸っこくかわいい絵に変えるなどの工夫も描かれていて、ドラマと漫画と併せて見ると一層面白い。