退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『薔薇の標的』(1980) / 東映セントラルフィルムらしいハードボイルド

新文芸坐の《追悼・黒澤満 70年代以降、日本映画の新しい地平を拓き多くの才能を輩出させた名プロデューサー》という企画で、映画『薔薇の標的』(1980年、監督:村川透)を鑑賞。主演は舘ひろし。出番は少ないが松田優作が特別出演している。

4年前に麻薬取引を暴力組織に密告され、弟分(峰竜太)を殺された野本(舘ひろし)は、警察に摘発されて収監される。出所後、組織への復讐の機会をさぐるなか、かつての恋人・杏子(中島ゆたか)が組織首領・浜田(佐藤慶)の情婦になっていた。そして4年前に浜田に密告したのは他ならぬ杏子だったことを知った野本は……。

映画『薔薇の標的』/中島ゆたか舘ひろし

アクションとメロドラマを融合させた東映セントラルフィルムらしい作品。ハードボイルドを得意とする村川透監督の持ち味がよく出ているし、ギラギラしたなかにもナイーブな一面を見せる舘ひろしの魅力を見事に捉えている。

たしかに映像はスタイリッシュだが、今日見直すと観客であるこちらが恥ずかしくなるような演出も見受けられる。当時に想いを馳せながら見るとちょうどいいかも。黒澤満の追悼にふさわしい作品といえるだろう。

個人的には中島ゆたかを愛でる映画。同情できない裏切り者の役だが、“魔性の女”を演じていて魅力的だ。ソフトながら舘とのベッドシーンもある。

それにしても『薔薇の標的』というタイトルは謎。