退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『七つの顔の女』(1969) / 岩下志麻の七変化モノだけど

新文芸坐の《「美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道」刊行記念 清純、華麗、妖艶 デビュー60年 女優・岩下志麻 さまざまな貌で魅せる》という企画で、映画『七つの顔の女』(1969年、監督: 前田陽一)を鑑賞。仲間を集めて不正蓄財した大企業の金庫から大金を盗み出す犯罪映画。

銀幕スターの”七変化”は、多羅尾伴内を演じて人気を博した片岡千恵蔵をはじめとして、美空ひばり市川雷蔵の主演作にも見られる定番の企画である。本作では松竹のエース・岩下志麻がこれに挑戦しているが、コスプレを楽しめるのは前半だけであまり活躍しない。

七変化が物足りのは岩下は美しいがお色気が足らないためだろうか。ポスターにも岩下に加えて、なぜかビキニ姿の女性(杉本エマ?)が大きく載っている。お色気成分の補強のためだろうかなどと考えてしまう。

七つの顔の女 [VHS]

七つの顔の女 [VHS]

岩下ファンは不満かもしれない映画だが、松竹喜劇の名手・前田陽一の手腕が発揮されていて、テンポがよくなかなか楽しめる喜劇映画に仕上がっている。劇場でも笑いをとっていた。また乾いたトーンでジメジメしていないのもいい。

盗賊のリーダーの岩下を支える仲間たち(緒形拳西村晃有島一郎左とん平)に芸達者が揃っていて、いま振り返るととても豪華なキャスト。これに加えて、ガードマン役の財津一郎がいい味を出している。とくに有島と財津のパフォーマンスは必見。

監督は、主演の岩下のコスプレを前半に出して義理を果たした後は、あとは好きに喜劇映画を撮るぜということだったのかもしれない。

余談であるが、現金を強奪した隠しておいた海堡(かいほう)が爆破されて、大金が海の藻屑になるというのがオチだ。当時、海堡(帝都防衛のために造成された要塞)が海上交通の妨げになるからと爆破されることがよくあったのだろうか。映画の爆破シーンは特撮であろうが、実際の爆破の様子を見てみたいものだ。ドキュメンタリーに残っていないのだろうか。

さて、この映画はDVD化されていないお宝映画で、今回は映画館上映の貴重な機会だったがフィルムが退色していて残念だった。岩下志麻の ”七変化”を鮮明な発色で見たかったなぁ。もう再プリントされることもないだろうから、このまま消えていくことになるのだろうか。惜しいことである。

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