退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『約束』(1972) / 岸恵子x萩原健一:斎藤耕一の代表作

新文芸坐の《「あの映画に、この鉄道」(川本三郎・著)刊行記念 映画の旅・鉄道への想い》という企画上映で映画『約束』(1972年、監督: 斎藤耕一) を鑑賞する。主演は岸恵子萩原健一

急行しらゆき号の車内で偶然出会った女と男。女(岸恵子)は監視付きで外出を許された受刑者、男(萩原健一)は軽薄そうな強盗犯だった。束の間の愛に浸るふたりに別れの時が来て、女の出所後の再会を約束するが……。


予告編 約束 1972 斎藤耕一 岸惠子

斎藤は年上の女と年下の男の映画を何本が撮っているが、本作もそのうちの一本。この映画のなかの岸恵子はあまりに地味な中年女性(劇中では35歳)にしか見えない。まあ受刑者なのでゴージャスに着飾るというわけにはいかないだろうが、これに惹かれるショーケンの気持ちはわからない。一方、ショーケンはいかにも年上の女にモテそうな、軽薄ながらどこか憎めない男を好演していて適役と言える。

映像は和製クロード・ルルーシュの異名をとった斎藤耕一の本領が発揮されている。海沿いの北陸本線を走る列車、その車窓からの風景。灰色の空、荒れた海など北陸の風景がよく切り取っている。往年の鉄道ファンは1両貸し切りで撮影したという車内の様子なども楽しめるのではないか。鉄道映画としても価値があり、今回の特集にふさわしい作品。

古いフランス映画のような突き放したラストは、後味が悪いとも思えるが、作品の雰囲気には合っている。尺が短いのもいい。

余談だが、刑務所前のラーメン屋台で、ショーケンが「ラーメン3つ、いちばん高いの」と注文するシーンがある。一度やってみたい。

あの頃映画 松竹DVDコレクション 約束
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