退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『植村直己物語』(1986) / 探検家を演じた西田敏行の役者魂がすごい

新文芸坐の《「映画監督 佐藤純彌 映画よ憤怒の河を渉れ」刊行記念 プログラムピクチャーから大作映画まで 映画の職人〈アルチザン〉 佐藤純彌》という企画で映画『植村直己物語』(1986年)を鑑賞する。冒険家・植村直己氏の伝記映画。文部省特選。西田敏行主演。

植村直己西田敏行)の数々の冒険の軌跡を、妻(倍賞千恵子)と出会いから別れまでまでの夫婦の生活を絡めながら描く伝記映画。フライヤーによれば、ほぼ忠実に植村の足跡を辿りロケをしたという。映像から過酷なロケだったことがわかるが、そのなかで奮闘する西田敏行がすごい。とくに極地で犬ぞりを操るところ印象的。

実際の植村氏と似ているとも思えないが、映画を見ていると西田が本人そのものに思えてくる。スーツが窮屈そうに見えるのもいい。DVDでぜひ西田のオーディオコメンタリー付きで本作を見たいものだ。


映画予告編 「植村直巳物語」

映画はもちろん登山や極地探検がメインであり、大スクリーンで見るロケ映像はすばらしいが、西田と倍賞の東京での芝居が映画全体を下支えしている言ってもいい。とくに倍賞の気丈な姿が印象に残る。倍賞なくしてこの映画は成立しなかっただろう。

映画からは離れるが、植村氏は偉大な冒険家であったことは間違いないが、現代の価値観では家庭を顧みずにやりたい放題をしていいのだろうか、と思わなくもない。映画では夫婦愛を前面に打ち出した演出だったが、実際は奥さんはさぞかし大変だっただろう。

当時、文部省のお墨付きだった作品なので、植村氏の振る舞いは社会に許容されていたようだ。しかし、いまならかなりの人が疑問を呈するだろう。人の価値観も時代とともに移ろっていく。

この映画を見るのは久しぶりだった。いま見るときっと退屈に感じるだろうと思ったが、意外なことに長尺を飽きずに見られた。さすが大作監督というべきか。

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