退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

自滅した雑誌『新潮45』の最終号を読む

週末、雑誌『新潮45』の最終号(2018年10月号)を読みました。いつも図書館から借り出してくるので発売日からおよそ1か月遅れで手元に届きます。

新潮45 2018年10月号

新潮45 2018年10月号

  • 発売日: 2018/09/18
  • メディア: 雑誌

出版界は「冬の時代」と言われ、雑誌の休刊はめずらしいことではありません。これまでも読んでいた雑誌が休刊の憂き目にあうことは何度もありました。

しかし、これほど炎上して自滅した雑誌は珍しい。発端は、同誌18年8月号の自民党杉田水脈衆議院議員による「『LGBT』支援の度が過ぎる」という寄稿文。これがLGBT差別だと世間から一斉に非難を浴びる。その2か月後、この最終巻で杉田議員の寄稿文を擁護する、特別企画「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」を組んで大炎上に至ります。新潮社はビジネスを優先させて急遽同誌の休刊を発表しました。

当然、長く続いた曽野綾子佐伯啓思の連載も打ち切りです。古市憲寿の「ニッポン全史」も面白く読んでいたので残念です。

また個人的には『プリニウス』という、最終号で第53回を数えるコミックの連載の行方がとくに気になっています。引っ越して連載を続けるのでしょうか。このコミックの部分だけ上質の紙を使っていて、連載開始時に「おっ」と思ったことをはっきり覚えています。

連載のほかにも最終号では、さいとう・たかをのインタビュー記事や、武田徹の論考も読み応えがありました。こうしたテイストの雑誌はユニークなので休刊は惜しい気もします。

雑誌『新潮45』も一応言論空間なのだから、世間が炎上したら誌上で検証なり反論なりすればいいだろうと思いましたが、あっけなく休刊が決りました。あまりに急だったので、本号には休刊の案内はなく、次号発売日の告知が載っています。なんとも後味の悪い幕切れです。

f:id:goldensnail:20181106070206j:plain:w360
f:id:goldensnail:20181106070203j:plain:w360