退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(2017) / 女子現テニス世界チャンピオン29歳 vs 男子元世界チャンピオン55歳

新文芸坐で映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(2017年、監督: ヴァレリー・ファリスジョナサン・デイトン)を鑑賞。女子テニスの元王者、ビリー・ジーン・キングを題材にした実録ドラマ。主演は『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーン

1960年代から1980年代初頭まで女子テニス界に君臨した名選手、ビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン)は、男性優位のテニス界を変えるため、仲間とともに女子テニス協会を設立して活動を開始する。男子テニス王者のボビー・リッグス(スティーヴ・カレル)は、この動きに異議を唱え彼女に試合を申し込む。このふたりより、1973年におこなわれた男女対抗のエキシビジョンマッチを中心にそれぞれの人間ドラマが描かれる。


BATTLE OF THE SEXES Trailer (2017)

ビリー・ジーン・キングは、山本鈴美香少女コミックエースをねらえ!』にキング夫人の名前で登場するなど日本でも有名であり、このボビー・リッグスとの試合もよく知られている。コミックではパワーテニスの象徴として描かれていたが、この映画ではプレースタイルなどテニスのテクニカルな面への言及がほとんどなかったのはテニス経験者からするとやや残念。

この映画はでキング夫人だけでなく、ボビー・リッグスのキャラクターがよく描かれているところは美点。ふだんは男性優位主義代表として、またはおどけたスポーツ芸人として明るく振る舞っているが、実はギャンブル依存症で妻にも逃げられるという弱い面を持っている。この「男女対抗試合」はボビーにとっても人生を賭けた一大イベントだった。

この映画は「男女対抗試合」でキング夫人が勝利するところで終わる。その後についてはテロップで簡単に紹介される程度だが、実際はレズビアンをカミングアウトしたあとでスポンサーが逃げていったり、パートナーと不仲になったり苦難を経験している。それでも女性及び同性愛者の権利向上に貢献して称賛を得ている。このあたりもドラマ性があって面白そうだ。

しかしこの映画では、そこまで描かずに「男女対抗試合」に焦点を据えて、軽妙なコミックドラマにまとめたのはよかった。最後の試合の白熱ぶりは『ロッキー』を思わせるほどベタであるがスポーツ映画としてもよくできている。さらに、ときおり館内に笑いが漏れていたが、コメディ映画としても楽しめる。とくに夫とレズビアンパートナーが遭遇するエレベーターホールのシーンは見どころ。

興行成績は冴えなかったようだが、映像的にも凝っていて映画ファンも楽しめる一作。オススメです。

バトル・オブ・ザ・セクシーズ (字幕版)