退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『1000日のアン』(1969) / 格調高く描かれるアン・ブーリン妃の物語

DVDで映画『1000日のアン』(1969年、監督: チャールズ・ジャロット)を鑑賞する。16世紀のイングランド国王ヘンリ8世の妃アン・ブーリンを題材にした歴史映画。

イギリスの絶対主義の時代、16世紀前半のイングランドが舞台。ヘンリ8世(リチャード・バートン)は、スペインからキャサリンイレーネ・パパス)を王妃に迎えるが男子が生まれず王位継承の問題が浮上する。宮廷で女官として仕えるアン・ブーリン(ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド)に一目惚れしたヘンリ8世は、キャサリンと離別してアンを皇后に迎えようと考えるが、王妃キャザリンの離婚をローマ教皇クレメンス7世に拒否される。ヘンリ8世はローマ・カトリック教会と絶縁して、イギリス宗教改革を断行した上で、アン・ブーリンが王妃として戴冠させる。しかし二人の蜜月関係が長く続かなかった……。


Anne of the Thousand Days Official Trailer #1 - Richard Burton Movie (1969) HD

よく知られている史実に沿った歴史映画なので、この先どうなるのだろうというエンターテイメントとしてのワクワク感はないが、世界史の教科書で学んだであろう一大イベントをビジュアライズして功績は大きい。とくに衣装と音楽が素晴らしい。もちろんトマス・モアやクロムウェルなどを歴史上の人物が登場して、役者がすばらしい演技を披露している。

演出は戯曲的。舞台作品を映画化したような印象を受ける。よく出来ているが、欲を言えば世界情勢をもう少しはっきり描くとさらによかったかもしれない。カール5世の「ローマの劫略」はセリフで登場するだけだし、当時弱小だったイングランドの欧州での立ち位置なども描いてほしかった。

映画ラストに、ヘンリ8世とアンの間に生まれた、後のエリザベス1世が中庭で遊んでいるシーンがある。「にやり」とさせられる、なかなか上手いエンディングである。