退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『ゲティ家の身代金』(2017) / 実際に起きた誘拐事件を基にしたスリラー映画

新文芸坐で映画『ゲティ家の身代金』(2017年、監督:リドリー・スコット)を観てきた。1973年ローマで実際に起こった誘拐事件を描いたノンフィクションを原作にしたスリラー映画。原題はAll the Money in the Worldだが、わかりやすい邦題が付けられている。

1973年のローマ。犯罪者たちはジョン・ポール・ゲティ3世( チャーリー・プラマー)を誘拐し、「世界一の大富豪」と言われた石油王ジョン・ポール・ゲティ(クリストファー・プラマー)に孫の身代金を要求するが、ゲティは断固拒否する。しかし裏では元CIAのチェイスマーク・ウォールバーグ)に孫を取り戻るように指示する。そしてポールの母親ゲイル(ミシェル・ウィリアムズ)は息子の安否を心配しながら、チェイスとともにポール救出に奔走するが……。


ALL THE MONEY IN THE WORLD - Official Trailer (HD)

この映画は、リドリー・スコット監督作品でもあり、予告編を見てこれは面白そうと思っていたが、日本公開時は上映館が少なかったこともあり見逃してしまった。予告編のケディが身代金をどうするか訊かれて支払いを拒否("Nothing."と一言)するシーンが妙に印象に残っていた。よくやく見ることができた。


映画『ゲティ家の身代金』予告編

見どころは頑に身代金の支払いを拒否していたケディが一転して支払い応じる場面。転機になったのが、下の映画ポスターにあるドル札の「耳」である。犯人がポールの耳を切り落としてゲティのもとに送りつけるのだ。これにマスコミたちが食い付き世論が炎上。ついに渋々身代金を出すことに同意するが、気前よく出すかと思ったら……。

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映像的に特筆すべきは人質の耳を削ぐ場面が詳しく撮影されていること。ある日医者がやってきて、無理やり人質の麻酔を嗅がせる。大人しくなったあと耳の周りの髪の毛を剃ってハサミで耳を切り落とす。プシューと出血するのがリアルである。このようなシーンが正面から映像化されたのは珍しい。見ていて「おえっ」という感じだが一度は見ておくといいだろう。

プロットはよくある人質事件で、実話ベースということもありどんでん返しもなく比較的小さくまとまっている。サスペンス映画としては物足りないが、人質になったのが「世界一の大富豪」の孫というのがポイント。石油王ゲティのカネに対する異常な執着が見どころか。

石油王ゲティ役は当初ケヴィン・スペイシーが演じて撮影を終えていたが、彼のスキャンダルにより公開できなくなる。急遽クリストファー・プラマーが代役に起用された。本作はこの交代劇でも話題になった。再撮影後、大急ぎで編集して年内の公開に間に合わせているが、ここにもリドリー・スコットの手腕が発揮されている。ケヴィン・スペイシーは老けメイクで撮影に臨んだという。映像はお蔵入りだろうがチラッと見てみたい気もする。しかし映画にとってはクリストファー・プラマーが代役になってよかったのかもしれない。

また美術品蒐集家としてのケディにも注目したい。彼のコレクションについて映画のなかで詳しく言及されなかったのは残念。彼の死後、コレクションをもとにロサンゼルスに美術館ができたという。

www.getty.edu

ゲティの死後、ポールや彼の父親など一族の行く末も気になる。原作ノンフィクションでは、その後のストーリーもカバーしているとのこと。ぜひ読んでみたい。それにしてもお金とはいったい何だろう、と考えさせられるた一本だった。

ゲティ家の身代金 (ハーパーBOOKS)

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