早稲田松竹で映画『ラッキー』(2017年、監督:ジョン・キャロル・リンチ)を鑑賞。2017年9月に亡くなったハリー・ディーン・スタントン最後の主演作。
舞台はアメリカ南部の田舎町。神を信じない現実主義者の一匹狼・ラッキー(ハリー・ディーン・スタントン)は90歳の一人暮らし。今日もいつもの一日が始まる。起床してラジオを付けて、コーヒーを飲んでタバコをふかす。軽くヨガをやった後は身支度を整えて、いつものバーで時間でクロスワードパズルをして時間を潰す。牛乳を買って帰り、お気に入りのテレビ番組を観る。ある日、そんなラッキーは突然意識を失うが……。
とても静かな映画。特別な事件は起こらない。スタントンを”当て書き”したかのような脚本は哲学的ですらある。彼の人生に重ねることもできるだろう。いくつかのエピソードを連ねて、ラッキーは「死」が近づいていることを悟り、人生にの終わりについて考え始める様子を描く。
陸ガメのエピソードでは、陸ガメの飼い主にデビッド・リンチ監督が俳優として出演しているのも見逃せない。また友人の息子の誕生パーティーに現れて、いきなりスペイン語の歌を歌い出す場面も感慨深い。
ラッキーは一人暮らしの少し偏屈な老人だが、コミュニティの一員としてみんなに愛されている。観客のなかにも、そんな老人になりたいと思う人は少なくないだろう。まあ日本の田舎の集落はなかなかこうはいかないような気もする。
エンドロールで流れる歌が心に染みるが、字幕の訳詞だとイマイチ伝わない。英語がもっとわかるといいのにと思った。