退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】清泉亮『誰も教えてくれない田舎暮らしの教科書』(東洋経済新報社、2018年)

私自身は田舎暮らしがいいとは思わないが、東京一極集中が問題とされ、日本の分断化が進んでいると言われる中、田舎のことを少しは知っておこうとこの本を手に取った。

誰も教えてくれない田舎暮らしの教科書

誰も教えてくれない田舎暮らしの教科書

題名の教科書とあるように、都会から田舎に移住する際のチェックリストとして大いに役立ちそうである。ただし田舎生活の魅力については、風光明媚だという以外にはあまり言及がない。既に田舎暮らしになんらかの魅力を見つけた人向けだろうか。

都会暮らしと田舎暮らしには、それぞれメリットとデメリットがあり、各人の価値観に依るところが大きいだろうが、都会の人が見落としがちなポイントは事前に理解しておくべきだろう。以下に印象に残ったことを挙げる。

まずは「移住者にとっても、田舎暮らしはカネがかかる」ということ。都会の何倍もの国民健康保険料や介護保険料に加えて、住民税も高い、という制度上の事実である。経済的メリットを求めて田舎移住を考えても、本末転倒になりかねない。

次に「集落全体で収入を得る共同事業が多い」ということ。要するに集落に住んでいるだけで、無償奉仕を強要される。田舎でのんびり過ごそうと考えてもそうは問屋が卸さないらしい。まあ共同事業ではないが、経験上都会では行政がやって当たり前のことを、田舎では住民がボランティアでやっているケースは多い。

そして、「地方は通信費も極めて割高になることがある」ということ。インターネットは生活に不可欠なインフラストラクチャになっているが、田舎では十分なネット環境がない場合があり、光ファイバーといえど過信できないとのこと。都会にいると、日本全体がブロードバンドに容易にアクセスできると思いがちだが、実態はそうではないらしい。移住するなら要チェックである。

本書は、都会の人が田舎への移住するときの「教科書」であるから、必然的に都会の人の視点でみた田舎が綴られている。しかも移住に際しての留意点が遠慮なく列挙されているので、集落の因習など、田舎の人が気分を害するだろう内容も見受けられる。田舎の人が、都会の人の考え方を知りたいと本書を読むのはやめておいたほうがいいかもしれない。精神衛生上よくない。それだけ教科書しては優れているとも言える。

あとがきに以下のフレーズがあった。

移住とは不都合と不条理の宝庫である。自分が想定するメリットよりもデメリットが必ず上回るのが都会に対する地方であり、田舎である。

けだし名言である。移住希望者はよく噛み締めてほしい。

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