演劇雑誌「悲劇喜劇」(9月号)の宝塚歌劇特集だったので、ふだん読まない雑誌だったが読んでみた。いつのまにか隔月刊になっていて驚いた。
創立100周年を経て、歌舞伎とならぶ日本独自のパフォーミング・アーツになりつつある宝塚歌劇の魅力に迫るという企画。小池修一郎、原田諒ら宝塚歌劇団の関係者のインタビューに始まり、宝塚歌劇団に縁のある人たちからの寄稿、さらに中井美穂、萩尾瞳、前田清実の鼎談により構成されていて、なかなか読み応えがあった。
そのなかで鹿島茂の「騙されたと思って、一度、観てみたら?」という短い寄稿が面白い。大学の同僚に「タカラヅカを観るんだったら、宝塚大劇場じゃないとダメだよ」と言われて、東京宝塚劇場ではなく、わざわざ宝塚大劇場でタカラヅカ初体験をしている。
実際は他の用事のついでだったのかもしれないが、そこまで説得されるのはすごい。この雑誌の読者は演劇好きだろうが、知人を演劇鑑賞に誘うのはハードルが高いし、さらに宝塚ともなるとキワモノ扱いされることも珍しくない。
いくら「騙されたと思って」と言っても、チケットはそれほど安くないし、そもそも最近はチケット難でなかなか席が取れなかったりする。また男性にとっては女性ばかりの劇場に足を運ぶのが億劫だという別の問題もある。
どうしたら、これほど見事に説得されるのか興味のあるところである。