退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『神田川』(1974) / 関根恵子と草刈正雄の美男美女カップルによる同棲生活ストーリー

新文芸坐の《二枚目は笑顔で殺す 草刈正雄スペシャルッ!》で、映画『神田川』(1974年、監督:出目昌伸)を鑑賞。大ヒット曲「神田川」の作詞家・喜多条忠の自伝的小説の映画化。映画に曲が使われているが、歌詞とは無関係。

上条真(草刈正雄)は早稲田大学の人形劇サークルの巡業先で出会ったみち子(関根恵子)と東京で偶然再会、同棲生活を始める。しかしエリート官僚の真の兄(勝部演之)は二人の仲、そして真の生き方を心良く思っていなかった……。東京の片隅に生きる若者の青春の焦燥が描かれる。当時の早稲田界隈の記録映像としても貴重。


神田川 かぐや姫

決して結ばれることのない別の世界に生きる二人の男女を描いた、劇中の人形劇サークルの演目「新かぐや姫」に、関根・草刈のカップルを重ねる構成は上手い。当時は現代より「家と家との結婚」という風潮が強かったのかなとのだろう。家が釣り合わないと結婚できないという設定らしい。

しかし別世界のふたりというが、関根のほうは水商売の母親が出てきたり、出自につて設定がしっかりしているのに対し、草刈のほうの実家の様子がはっきりしないのは不満。兄がエリート官僚で、真も地方から早稲田に進学しているのだからそれなりの家なのだろうが、強引な兄が突出するばかりで、説明不足に思えた。

途中、みち子が妊娠するも真の兄がだまし討ちのように中絶させる(明らかに犯罪!)など、ドロドロしたシリアスな展開になる。兄からの支援を打ち切られた真は一気に貧乏生活に陥るが、美男美女のふたりに貧乏が似合わない。とくに草刈は貧乏暮らしなのになんとなくオシャレに感じてしまうのは難点か。

ラストで心中した人形劇サークルの仲間が荼毘に付される場面で、真が「これからもふたりでやっていこう」とばかりみち子の手をしっかり握るが、みち子は手を握り返さずに首を振る。二人の仲の終焉を示唆するラストがほろ苦い。

また興行上の要請なのだろうか、主演二人にはラブシーンが用意されていて、関根が申し訳程度に脱いでいる。「きた~」という感じで、美しい裸体を披露しているが、なんとも中途半端。これを期待して見に来た観客は消化不良だったことだろう。

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