退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(1966) / 昭和ガメラ第2作は大人向け

オールナイト《新文芸坐 昭和ガメラまつり 2018》で映画『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(1966年、田中重雄監督)を鑑賞。昭和ガメラシリーズ第2作。この作品から総天然色。

第2作はシリーズのなかでも異色作で大人向けの特撮映画になっている。ガメラの産みの親ともいうべき湯浅憲明を特撮監督に降格、ベテラン田中重雄が監督を務めている。湯浅憲明が監督でない点でもシリーズのなかで例外的な作品である。

そのためか3人の男が巨大なオパールニューギニアに探しに行くギラギラとして大人向けのドラマが挿入されている。ニューギニアでは底なし沼、毒サソリなどの困難を克服して、3人はオパール(実はバルゴンの卵)を見つけけるも強欲な小野寺(藤山浩二)が仲間を始末し、オパールを独り占めして帰国する。

そこまでは一般映画で冒険活劇を見ているようでなかなか見応えがある。とりわけ小野寺のテンションが高い悪役ぶりが目を引く。子どもは退屈だったかもしれないが。舞台が日本に移っても、小野寺との乱闘シーンや、江波と本郷功次郎とのメロドラマなど濃厚な人間ドラマが展開され楽しめる。


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出演者では、バルゴンの危険性を知らせ来日するカレンを江波杏子が演じていることが特筆できる。ニューギニアの部族の長老の孫という設定で、エキゾチックな容姿とよく合っている。江波は当時助演が中心だったが、同じく1966年に若尾文子の代役で出演した『女の賭場』で初主演を遂げている。以後、賭博師が当たり役となり一時代を築くことになる。

特撮は冒頭のガメラ黒部ダムを破壊するシーンや、バルゴンの冷凍ガスで街が凍るシーンなどよくできている。また バルゴンの造形が優れている。やはり四足歩行の怪獣は横長の大映スコープによく映える。

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バルゴンと対決する人間側が、敵をよく分析して対策を講じるのもよい。カレンがニューギニアから持ち込んだダイヤを使った特殊光線を使ったり、雨に弱いバルゴンに人工雨を振らせたり、いろいろ手が込んでいる。極めつけはバルゴンの虹光線を特殊塗料を塗ったパラボラアンテナで反射させて、バルゴンに一撃加えるのも面白い。

終盤、バルゴンは琵琶湖でガメラと戦うが、水に弱く、傷ついたバルゴンに勝ち目はない。二匹は湖中に沈んでバルゴンは絶命する。が、ガメラはどうなったのか語られない。ガメラも人間の脅威じゃないのかという疑問があるが……。

昭和ガメラシリーズのなかで異色作ではあるが、バルゴンの造形やヒロイン・江波杏子の出演ににより存分に楽しめる。やはりヒロインの存在が大きい。