退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『手討』(1963) / 市川雷蔵主演の格調高い悲恋物語

角川シネマ新宿の《大映創立75年記念企画 大映男優祭》で、映画『手討』(1963年、田中徳三監督)を鑑賞。「番町皿屋敷」を大胆に脚色して悲恋物語として映画化。原作は岡本綺堂。主演は市川雷蔵

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徳川幕府の治世は落ち着き、泰平ムードが漂い始めた江戸時代初期。戦功あった直参旗本も次第に疎んじられ居場所がなくなっていた。ある日、前田加賀守の能舞の席で大あくびした旗本・進藤(城健三朗)は、幕閣連中に呼び出されて切腹を命じられる。理不尽な命に憤る旗本たちは白柄組を結成し、大名たちとの対立をますます深めていく。白柄組のなかで進藤の親友・青山播磨(市川雷蔵)は過激になる旗本仲間の行動を抑えるのに腐心する。しかし、ある事件をきっかけに旗本と大名との対立が決定的になる。幕閣は和解のため青山と大名の縁につながる姫の婚儀を画策するが、青山には、身分ちがいだが将来を誓い合った腰元・お菊(藤由紀子)がいた……。

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まず「番町皿屋敷」を悲恋物語に見事に翻案した脚本が素晴らしい。姫との縁談を耳にした、お菊が青山の気持ちを試すために家宝の皿を割るという唐突な行動に出たのは、女の浅知恵か悋気の表れであろうか。真心を疑われた青山が自らの手でお菊を成敗するという悲恋を描く。

見どころとしては、序盤で城健三朗(のちの若山富三郎)が前田家の門前で舞台を設えて切腹するパフォーマンスがすごい。やり過ぎだろうと思うが、いかにも豪の者という演出で印象に残る。

ヒロインの藤由紀子は時代劇初出演だったが、市川とのカップルはまさに美男美女でありスクリーンに映える。映画スターとしての風格さえある。美形の市川雷蔵の釣り合う女優がそうはいないだろう。将来を期待されていたが、1965年に同じ大映で活躍していた田宮二郎と結婚して、女優業から引退している。いまさらだが惜しい気がする。

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映画『手討』(1963年) / 藤由紀子(左)と市川雷蔵

派手な殺陣がないので一見地味な時代劇だが、当時の大映映画の趣を伝える格調高い作品として高く評価できる。オススメです。

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