退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】梶芽衣子『真実』(文藝春秋、2018年)

女優・梶芽衣子の自伝。語り書きだと思うが、本人が読者に語りかけるような文体は力強い。表紙の写真には眼力がある。読後にまず思ったのは、芯の強い人だなということ。

真実

真実

梶芽衣子は、1965年に日活に入社して映画デビューしている。やはり梶といえば「さそり」シリーズだろう。他にも「野良猫ロック」シリーズ、「修羅雪姫」シリーズで活躍して、アウトローヒロインのイメージが定着した。古い映画好きのファンしては、この頃のエピソードがいちばん面白い。

女囚701号さそり

アウトローヒロインというと聞こえがいいが、一歩間違えればキワモノであり、女優としての活躍の幅はせまい。こうした初期のイメージを払拭したのが、数々の映画賞に輝いた映画『曽根崎心中』(1978年)である。若尾文子を組んで多くの作品を残した増村保造監督とのエピソードは興味深い。本のなかにも若尾文子への言及がいくつかあったが、若尾文子梶芽衣子で重なる部分もあるのだろうかと思いながら読んだ。

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ぶっちゃけていると言えば、天下の東映に映画『鬼龍院花子の生涯』(1982年、五社英雄監督)の企画をパクられた一件がすごい。主演・夏目雅子の「なめたらいかんぜよ!」というドスの効いたセリフが一世を風靡して大ヒットした映画である。。梶が、この映画の企画を出していたとは初耳だった。東映もエグいことやるなあと思ったが、なにより増村保造梶芽衣子のコンビで映画化されていたら、どんな映画になっていたかと思うと実に惜しい。

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テレビ時代劇『鬼平犯科帳』に1章割いていることにも注目したい。梶が密偵おまさ役で途中から参加した経緯など、出演者にしかわからない貴重な情報が豊富で読み応えがある。時代劇をチーム一丸となってつくっている様子が伝わってくる。この時代劇も2016年に惜しまれながら終了している。

鬼平犯科帳 第1シリーズ DVD-BOX

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この本の魅力のひとつは、錚々たる映画人たちが次々に登場するところだろう。映画スターたちの横顔を少しだけ見れる楽しみがある。例えば、勝新太郎が歌についての助言をさりげなく授けるあたりはなかなかいい。

また巻末にフィルモグラフィーなどの資料が載っているも好印象。資料を眺めていると、梶の出演作を観たくなる。さいわい、6月には新文芸坐で《梶芽衣子映画祭》が開催されるとのこと。楽しみにしたい。

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