退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」 @国立西洋美術館

会期終了が迫ってきたので上野の国立西洋美術館で開催中の「プラド美術館展」を見てきました。「日本スペイン外交関係樹立150周年記念」の企画展です。2016年頃は日伊国交樹立150年を記念したイタリア美術の展覧会が数多く開催されたので、今度はスペインの番でしょうか。

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展示会の目玉は、ディエゴ・ベラスケス(1599-1660, Diego Velázquez)の作品7点。バロック期を代表する画家です。CMで及川光博が「これは事件です」と言っていましたが、まあ大物であることは間違いありません。

ベラスケスは、国王フィリッペ4世の宮廷画家として活躍し、スペインの絵画芸術の頂点ともいえる黄金時代を支えた存在でした。この展示会では、フィリッペ4世の宮廷を飾った17世紀のスペイン絵画を中心に、ルーベンスティツィアーノらのプラド美術館のコレクションを楽しめます。見応えがありました。西洋美術館の企画はハズレはありません。


プラド美術館展CM(60秒)

美術ではスペイン黄金時代と言われる17世紀ですが、スペイン帝国アルマダ海戦(1588年)で無敵艦隊イギリス海軍に敗れて以来、衰退の兆しを見せ始めていた時期でした。その後、ポルトガル独立、オランダ独立を経て、17世紀末にスペイン・ハプスブルク家が断絶すると、王位継承問題からスペイン継承戦争(1701-1713)が起こり、その戦後処理として新大陸の多くの植民地を失うことになります。

その後もイギリスやアメリカ合衆国が台頭する新らしい世界秩序構築の流れのなか、1898年の米西戦争に敗北すると、スペインは19世紀末までに海外植民地のほぼすべてを失い、かつて「太陽の沈まない国」と形容されたスペイン帝国の栄光は終焉を迎えることになります。

こうしてスペインは凋落の一途を辿り、さらに20世紀にはスペイン内戦、そしてフランコ政権というきびしい時代経験します。そうした混乱期にも王家の美術コレクションが失われなかったのは、さすがとスペインというところでしょうか。おかげで今日、東京にいながら、かつてのハプスブルク家のコレクションを堪能できるわけです。

わが日本もこれから数世代をかけて衰退し、一度は三等国まで落ちるのは避けられないでしょう。そのとき、何が日本に残っているだろうかと考えてみるとちょっと悲しい気持ちになります。アニメなどのサブカルチャーぐらいでしょうか。

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さてベラスケスといえば、いつか《教皇インノケンティウス10世》(1650)を見てみたいです。ベラスケスがイタリア旅行に出かけてローマに滞在したときに描かれた作品ですが、後にフランシス・ベーコンがこの肖像画をモチーフにした一連の作品を制作したことでも知られています。電気椅子みたいなアレですね。この教皇肖像画はさすがにプラド美術館になく、ローマにあるそうですが……。

ベラスケスとプラド美術館の名画 (単行本)