退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】安河内哲也『全解説 英語革命2020』(文藝春秋、2018年)

2020年度大学入試からセンター試験が廃止され、新たに「大学入試共通テスト」が実施されることが決まった。受験生は3年生の4月から12月までに英検など認定された民間の外部試験を2回まで受験、成績のよい方を志望大学に提出することになる。ただし4年間は経過措置として、従来型の試験も残される。

英語以外の教科も試験制度改革の影響を受けるが、上記のように民間試験が導入されて四技能が評価される点から「戦後最大の改革」と呼ばれれる。タイトルの「英語革命」というのも大げさでない。

この本では「ウォッシュバック」と呼んでいたが、大学入試が変わればそれに応じて、指導要領とは関係なく高校の英語教育も変わるという。大学入試は一大事なので当たり前だし、大学には無縁の底辺校でも英語教師は新しい大学入試を経て教師になるのだから影響は大きいという。

この本は「大学入試共通テスト」の英語がどのように実施されるのかがよくわかるが、各大学がこの試験をどのように扱うのかまではわからない。一定のレベルを出願資格にするのか、ある程度加点するなどさまざまな活用方法があるが、大学の対応次第で、まだ方針は出ていないようだ。

筆者は、「いまよりはマシ」とぐらいのトーンで今回の入試改革には概ね好意的のようだが、私は本当にこれでいいのねと思った。大学入試は公平であることが求めれるが、この方法では公平性を担保できないだろう。

誰でも疑問に思うのは、数多くの民間の外部試験を相対的に比較することができるのだろうかいう点である。このスキームではCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)を持ち出しいるが、本来そういう目的で使うものではないだろうし、区分があまりにもラフすぎる。実際はどうするつもりなのだろう。

またこの本では、麴町学園女子中学・高校での実践的な取り組みが紹介されているのは好感がもてる。筆者の理念を実践していて机上の空論でないところがいい。大学入試のあり方は別にして、中学高校でこのような英語教育を受けられた生徒たちはしあわせであろう。

対岸の火事とはいえ、入試改革で右往左往する受験生はかわいそうだなと思ってしまう。そもそも私の世代は入試でラッセルなんか読まされて、スピーキングやリスニングなんかまったくやらなかった。しかし周りを見ていると語彙と読み書きさえしっかりやっていれば、いざとなればなんとかなっている。

昔に比べれば、すでにオーラルにかなりシフトしているのだから、まず昔と比べて日本人が「英語ができる」ようになったのかどうか、一度立ち止まって評価してみたらどうだろうか。