退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『連合艦隊』(1981) / 元海軍士官が撮った特撮戦争映画

映画『連合艦隊』(1981年、松林宗恵監督)をDVDで鑑賞。東宝で製作された特撮戦争映画。特技監督中野昭慶

日独伊三国軍事同盟の締結から沖縄水上特攻作戦に参加した戦艦大和の轟沈まで時期における連合艦隊の興亡を追う。レイテ沖海戦を取り上げたのは貴重。当時の時代と世相を背景に、海軍に関わった本郷家と小田切家の架空の2つの家族を中心に市井の人たちの視点から戦争を描く。

本郷家では、永島敏行と金田賢一の兄弟が戦争の犠牲になり、戦後生き残って孫と海岸に佇む森繁久彌の芝居が光る。また永島の許嫁、後に金田の妻になる古手川祐子の花嫁姿が美しく映画に花を添える。

一方小田切家では、かつて海軍勤務を経験した財津一郎が再徴兵され戦艦大和に乗艦し、最後の出撃時に戦闘機の搭乗員となった息子・中井貴一が上空から見送るシーンが見どころ。クライマックスで流れる主題歌の谷村新司「群青」が心にしみる。ちなみに本作が後に大俳優になる中井の映画デビュー作である。

まあ2時間余りの尺で連合艦隊の興亡を描けるはずもなく、加えて人間ドラマにもかなりの時間を割いているのでとても時間が足らない。どうしても駆け足になるのは仕方ないとはいえ、特撮シーンも他の映画からの流用が目立つのは残念。

ただし特撮には目玉がある。この映画のために製作した戦艦大和の縮尺1/20の模型だ。特撮について言えば大和にすべてを注ぎ込んだのだろう。島影から大和が現れるシーンは雰囲気がよく出ているし、最期に天まで届くかと思うほどの火柱を上げて轟沈するシーンも必見。大和の沈没が連合艦隊の最期というわけだ。

今回見たDVDには、松林宗恵監督のオーディオコメンタリー(聞き手:樋口真嗣)が収録されていた。オーディオコメンタリーと言えば、聞き手のしゃべりに相打ちを打つ程度であまり語らない人もいるが、松林監督は実に饒舌だった。映画の場面とは関係なく、海軍士官として従軍した経験などをたっぷりと語っている。あの当時を生きた時代の証人としての言葉はとくに貴重に思えた。パッケージソフトの醍醐味を満喫した。

連合艦隊