退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『いのち ぼうにふろう』(1971) / 夜の大捕り物の提灯は必見

新文芸坐の《日本映画 匠の技Vol.4 白黒映画の美学 日本映画黄金時代に到達した、光と影の極みを堪能する11日間》という企画で映画『いのち ぼうにふろう』(1971年、小林正樹監督)鑑賞。山本周五郎の短編小説『深川安楽亭』の映画化。主演は仲代達矢。撮影の岡崎宏三をフューチャーした2本立て。併映は『六條ゆきやま紬』(1965年)。

2016年は小林正樹監督生誕100年のイベントがいろいろ開催された。それ以来気になっていたが企画上映では見逃していつか映画館で見たいと思っていた作品。

運河のなかにポツンとある一膳飯屋の深川安楽亭。場末の店に巣食うならず者たちが、女郎屋に売られた幼なじみを取り戻そうとする若い男(山本圭)のために命を賭すという人情噺。

とにかく安楽亭にたむろするメンツのキャスティングがすごい。仲代達矢佐藤慶岸田森、そして中村翫右衛門。加えて勝新太郎が特別出演している。どうすごいでしょ。それにしても仲代のギョロ目が怖いよ。

冒頭、これは期待できると見始めるが拍子抜け。それぞれの役者はきちんと仕事をしているが映画はつまらない。山本周五郎特有のヒューマニズムのせいか、当時の安保闘争に紐付けられた反権力・反体制が鼻につくためか、映画が進むにつれてどんどんつまらなくなる。

極めつけは酔っ払いを演じた勝新太郎勝新だから最後で大活躍するかと思いきや、これはいったい……。わざわざ出演した意味はあったのだろうか。もういや。

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それでも白黒映画特集としては見るべきものがある。ラストの大捕り物の導入部で多数の捕り方の提灯が安楽亭に迫る場面は圧巻。豪華な安楽亭のセット、武満徹の音楽、そして岡崎宏三の撮影があいまって観客を圧倒する。演出過剰ではないかとも思えるが、最後まで見てよかったと思えるぐらいには楽しめた。

いのちぼうにふろう