退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】橘玲『80's エイティーズ ある80年代の物語』(太田出版、2018年)

以前橘玲の本を読んで、どんな人だろうと思っていたので手に取ったみた。筆者の「80's」とは、早稲田大学を卒業した1982年からオウム真理教による地下鉄サリン事件が起きた1995年までだという。この本は、この「長い青春」の時期を中心に綴った自伝的回想記である。

80's エイティーズ ある80年代の物語

80's エイティーズ ある80年代の物語

プロローグにボスニア・ヘルツェゴビナの話が出てきて、なんかめんどくさい本かなと思ったが、ガマンして読んでいくと回想記に始まる。上京するまでの生い立ち、そして大学生活に触れたあとで「80's」に突入する。

大学卒業後、小さな出版社を経て仲間と編プロを立ち上げる。そこで創刊したディーンズ雑誌が不健全だと国会で取り上がられたり、教団広報とのコネでサティアンを訪れてオウム事件を追うようになるなど、当時の大きな事件と関わりを持つあたりは面白い。

また最後に筆者が関わった人たちの「その後」を追っていく構成もよかった。大学で初めての友人は消息不明だという。まあ人生はそんなものだろう。私も「あいついまごろ何してるかな」と思うことがある年齢になった。

80年代を知る人にとっては、自分の経験と重ねても面白く読めるだろう。登場する出版社や本などの固有名詞、そして社会の出来事がとても懐かしい。

この時期になぜ自分語りの本を出そうと決意したのだろうと思いながら読んでいたが、あとがきに「年齢によって書けるものも変わってくる。若い時の話を書くならこれが最後の機会だと思った」とあった。なるほどと思った。

願わくば、もう少し大学時代のことに紙面を割いてほしかった。ロシア文学の教授に「卒業させるから」と言われて学科に誘われるあたりが面白い。謙遜かもしれないがキリル文字で落ちこぼれてほとんど勉強していない様子。しかし提出した卒論は教授に認められて、「約束どおり」に卒業している。

以前読んだ新井素子のエッセイでも立教大学在学中に作家活動に入り、ロクに勉強しないで卒業させてもらったとあった。当時の私立文系はどこもどうだったのだろうか。うらやましい。実験とレポートに追われていた私の大学時代が恨めしい。まあ就活は楽だったけどね。

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