退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『模倣犯』(2002) / ガンバりすぎた山崎努

神保町シアターの《赤川次郎と現代ミステリーの世界 映画で愉しむ謎解きエンターテインメント!》という企画で、映画『模倣犯』( 2002年、森田芳光監督)を鑑賞。原作は宮部みゆきの長編小説。中居正広主演。

評判がよくない作品だが言われているほど悪くなかった。森田監督の実験映画として捉えれば、映画として面白いかは別にして鑑賞に耐えるのではないだろうか。映像に埋め込まれたいろいろなオマージュを探してみるのよいかもしれない。

もっとも私は原作を読んでないので比較はできないが、原作ファンには納得できない点が多々あるのだろう。しかし映像作品と小説は別モノだから、ある程度は仕方ないだろう。これは長編映画の映像化では避けられない。原作者が納得していたのは不明だが……。

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映画『模倣犯』(2002年) / (左から)山崎努津田寛治中居正広

原作小説から大事な要素が捨象されたためだろうか、犯人像や動機、生い立ちなどすべてが薄っぺらい。さらにデジタル加工を多用した映像技術も薄っぺらい。映画全体が軽薄だ。しかし、それが直ちに悪いとは思わない。そのテイストで最後まで引っ張ってくれて、観客が納得すればそれでいいのだ。

映画の人間ドラマも希薄だが、被害者の祖父の豆腐屋を演じた山崎努が熱すぎて浮いていたのが気になった。映画全体が薄味なのに名優・山崎努の出演シーンだけ激アツ。バランスが悪いだろうかと思ったが、演出としてこれでよかったのだろうか。

この映画は、事件を社会正義をお題目に被害者の心情を踏みにじるマスコミや、その報道に安易に迎合するするマス(観客)への批判とも捉えることができる。木村佳乃が演じるジャーナリストの視点を、そのまま観客に視点だと解釈すれば、いろいろ納得できる。実際、2016年にテレビドラマ化されたときは中谷美紀が演じるジャーナリストの視点で描かれたらしい(未見)。

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今回の上映企画はミステリー特集だったが、突飛な展開が多く謎解きのために細部を見ていた観客は失望したかもしれない。あまり上映機会が多い作品ではないだろうから、映画館のスクリーンで見れたのはよかった、ということにしておこう。余談だけどこの頃の中居正広くんはカッコいいね。



売店で角川三人娘(薬師丸ひろ子原田知世、渡辺典子)のブロマイドを売っていました。なつかしい。
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角川三人娘のブロマイド!