退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】大杉漣『現場者―300の顔をもつ男』(マガジンハウス、2001年)

先月急逝した俳優・大杉漣さんの自伝を読んでみました。タイトルの「現場者」は〈げんばもん〉と読ませます。

現場者―300の顔をもつ男

現場者―300の顔をもつ男

この本では、大学進学のため上京した後、転形劇場で舞台俳優として俳優としてのキャリアを始めて、長年の下積み時代を経て、映画俳優としてブレイクするあたりまでの時代をカバーしています。

タイトルのとおり、撮影現場でのエピソードが満載でたいへん面白く読みました。現場主義だった大杉さんの赤裸々な人物像がよく描かれている良書です。写真がふんだんに載っているのも美点。

とは言っても、現場のエピソードが面白いのと映画が面白いのとは違うでしょう。それでも、この本に紹介されていた次の3つの作品は映画館でちゃんと見たいと思いました。名画座の追悼企画で上映されるといいのですが……。

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フィルモグラフィーを見ると多くの出演作を誇る大杉漣さんですが、2000年のロッテルダム国際映画祭で、「いったい、日本にはレン・オオスギは何人いるのか?」と質問された三池崇史監督の答えが洒落ています。「レン・オオスギ3号まで確認できている」と。多彩な役柄をこなした大杉さんが海外でも評価されていることを示すエピソードです。

この本のなかに、過労で倒れて気がついたら病院のベッドのなかにいた、というエピソードがありました。どうしても今回の急逝の報と重ねています。とても寂しい気分になりました。健康管理はどうなっていたのかと思わずにはいられません。

さて映画関係者の自伝や評伝を読むのはわりと好きですが、昔の日本映画で活躍した人物の場合、五社協定の下に大手映画会社と契約して俳優業を始める場合が多いですが、大杉さんの時代はそうした体制はすでに崩壊しているのが分かります。そうした新しい時代の俳優さんが他界したという報に接すると、時代は流れたなと感じます。

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