退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『あゝ、荒野』(2017) / 寺山修司の長編小説の映画化作品を前後編一気に見たよ

新文芸坐で『あゝ、荒野』(2017年、監督:岸善幸)の前後編を二本立で上映していたので見てきた。お値打ちかと思ったが、この興行は特別料金だったのでやや不満に思った。それでも封切りで見るよりは随分と安かったし、前後編を一気に見れたのもよかった。

あゝ、荒野 (特装版) Blu-ray BOX

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原作は1966年に刊行された寺山修司の同名小説。寺山の唯一の長編小説である。映画では時代を東京五輪が終わった2021年に潤色されている。東日本大震災から10年後でもある。舞台は新宿界隈。

母に捨てられた少年院帰りの沢村新次(菅田将暉)と、韓国生まれで、元自衛官の父(モロ師岡)から家庭内暴力を受けて育ち吃音に悩む二木建二(ヤン・イクチュン)の二人の物語。このふたりは、元プロボクサーの堀口(ユースケ・サンタマリア)のジムでボクシングを始める。

こうして始まるボクシングを題材にした青春映画。とにかく長い。前後編で5時間ぐらいだろうか。気になっていた映画だったが、あまりに長いので、映画館に見に行くか、後でパッケージソフトをマイペースで見るか悩んだが、結論からいうと映画館で見て正解だった。長さを感じさせないというと言い過ぎだが、気持ちのよい長編であった。


『あゝ、荒野』予告編

前編は二人の出会いと生い立ちを紹介する導入部。そしてプロボクサーを目指して奮闘する姿が描かれる。後編は宿命ともいうべき二人の対決と、その悲劇的な結末まで一気に疾走する。

こうしたボクシング映画は、どうしても俳優が演じるボクサーの技術に満足できないことが多い。今回、相当ボクシングのトレーニングを積んだのだろう。さらに現代の映像技術の進歩に依るところも大きいのだろう。それなりに鑑賞に耐えるボクシングシーンをを見せてくれる。その点は及第点と言っていい。

しかしラストの二人の試合はは納得できない。ボクシング技術云々というより、もはやボクシングの試合と言えないようなグダグダぶり。かなり強引な幕切れだったのは惜しい。

映画の時代性もちょっと気になった。時代設定を2021年に設定したため、現在とあまり変わらない新宿でロケできたので撮影は楽だったのだろうが。しかし経済的徴兵制や自殺防止など未来の政治テーマを盛り込んでいるのが、どうも取ってつけたような印象が拭えない。まったく伝わってこない。

二人の青春ドラマが素晴らしいだけに、時代の空気を上手く描けていないのが残念だった。この映画には、自殺、高齢者の介護、震災、貧困など雑多な社会問題を取り込んでいるが、映画のなかでは消化しきれていない。

また、この映画では菅田の濃厚な濡れ場が話題になった。この映画が菅田のアイドルからの脱皮なのか分からないが、ヒロインの木下あかりが大胆に脱いでいるのは評価できる。最近のヒロインは必然性があるのにまったく脱がないことについて不満があったので、テレビドラマではなく劇場映画なのだからこれ程度の表現はあっても然るべきだろう。

しかし、にっかつロマンポルノじゃあるまいし、木下だけでなく他の女優陣までばんばん脱ぐことはないのにとも思ったが、まあいいだろう。長尺ではあるが良質の青春映画として幅広い人にオススメしたい。R15だけどね。

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