退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『ポーラX』(1999) / 鬼才カラックスによる自滅劇

早稲田松竹のレイトショーで映画『ポーラX』(1999年、レオス・カラックス)を鑑賞。以前観たときは「なるほどわからん」と唸った映画だが再挑戦した。私も以前の私ではないはず、と思ったがやっぱり「なるほどわからん」。理解しようと思わずに見るべき映画なのかも……。

ポーラX [DVD]

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著名な外交官の息子で、処女作がベストセラーになった小説家ピエール(ギョーム・ドパルデュー)は、美しい母親マリー(カトリーヌ・ドヌーヴ)とともに大きな城館で何不自由なく暮らしている。婚約者リシュー(デルフィーヌ・シェイヨー)との結婚を控えて順風満帆の人生に思えたが、ある日、異母姉を名乗るイザベル(カテリーナ・ゴルベワ)と森で出会ったことから一転する。両親がイザベルの存在を隠していたことにフンガイして、ピエールはイザベルを連れて城を出てパリに向かう。パリでの生活はイザベルが障害になりうまくいかない。出版社に変名で小説を送るも模倣だと酷評されたり、テレビ出演でも偽者呼ばわりされたり、社会から相手にされない。最後にはイザベルにも裏切られて精神が崩壊してしまう。


ポーラ X (1999) 予告編

このようにストーリーは追えるのだが、主人公ピエールの心理はまったく理解できない。ざっくり言えば、金持ちのボンボンが偶然出会った女に魅入られて身を持ち崩すという、よくある話である。

映像的には、城館が暮らしていた時期の「光の世界」と、パリに出てからの「闇の世界」との対比は印象深い。とくに「光の世界」が素晴らしい。ピエールがバイクで疾走するシーンが好きだ。途中、転倒してバイクが壊れるが、そのまま乗っているのがとても気になった。せめてバックミラー直さないと危ないだろう、と。

また劇中では描かれないが、溺愛していたピエールが自滅した後の母親マリーはどう思ったのだろうか。親不孝にもほどがあるというものだ。

この映画のピエールをカラックス監督自身の境遇に重ねることができるという人もいる。これが的を得ているのかわからないが、もしそうだとすればこの映画を撮った監督の心の闇は深い。寡作として知られるカラックス監督の現在は境遇はどうなっているのだろう。上映後、そんなことを思った。

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早稲田松竹は通常二本立だが、今回は特別レイトショーなので本作一本だけの上映だった。こうした難解な作品は、1本だけ観てそのまま映画館を後にするのがいいのかもしれない。ちょっと割高に思えるがいい企画だと思った。