退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『野獣死すべし 復讐のメカニック』(1974) / 藤岡弘版「野獣死すべし」は復讐鬼!

新文芸坐セレクション Vol.4 絶対に観てほしい活劇 電光石火の24本!》で映画『野獣死すべし 復讐のメカニック』(1974年、監督:須川栄三)を鑑賞。原作は大藪春彦の小説「野獣死すべし 復讐編」。主演は藤岡弘。フィルムが経年変化のために褪色していて残念だった。併映は『野獣狩り』だったので藤岡弘主演作の二本立てを堪能。

野獣死すべし」と言えば、松田優作の主演映画を思い起こす人も多いだろうが、東宝でも仲代達矢(1959年)と本作の藤岡弘の主演で2度映像化されている。松田優作版は主人公がサイコパスのような演出がされていたが、この映画ではひたすら復讐のために関係者を殺していく冷徹な主人公が描かれる。

この映画は伊達邦彦(藤岡弘)復讐譚なのだが、続編のせいだろうか動機がはっきりしないのが難点。フラッシュバックで父親が死に追いやられたシーンが何度か登場するが、関係者を次々に殺していくほどのことなのかどうもよく分からない。

伊達の表の顔はメルヴィルの『白鯨』を講じる大学講師だが、まったく似合っていないのがかえって面白い。もちろん裏の顔は野獣の血が流れている復讐鬼。事件の関係者を次々に殺していくばかりか、利用価値のなくなった人は女でも容赦しない冷血漢。それでもどこかに哀愁が漂うという難しい役どころを藤岡弘が好演している。

復讐のなかでは、心臓病を患う銀行家(加藤嘉)を雪の中をさんざん引き回し、薬を取り上げたうえで心臓発作を引き起こし殺してしまうシーンが見どころか。細かい事情が映画では分からないが、融資を引き上げたぐらいでこんなに恨まれても困るなぁ……。老人をいじめじゃないか。そしてラスボスは小松方正。憎たらしい役を演らせたら天下一品。こいつは殺せれてもいいな。

ラスボスを殺してついに復讐を遂げたと思った瞬間、警察のサーチライトが点灯。すでに警察に包囲されていた! 包囲するひまがあったらラスボスを助けろよと思ったが、伊達は警官隊の発砲により射殺されてしまう。

結局『明日に向かって撃て』のような幕切れだったが、まだ原作が残っているのに伊達邦彦は不死身じゃないくてよかったのだろうか。ラストは安直だったが、藤岡弘は文句なくかっこいい。アクション映画の隠れた秀作。

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