退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『くちづけ』(1957) / 増村保造の監督デビュー作

角川シネマ新宿の《大映創立75年記念企画 大映優祭》で、映画『くちづけ』(1961年)を鑑賞。増村保造の監督デビュー作。原作は川口松太郎。白黒映画。

くちづけ [DVD]

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それぞれの父が収監されている小菅の拘置所で偶然出会った欽一(川口浩)と章子(野添ひとみ)は、その日デートのように一緒に一日を過ごす。結局喧嘩となり気まずく別れるが、ふたりは次第に惹かれていく。

イタリア留学を経験した増村保造が撮った健康的かつモダンでテンポのよいラブストーリー。後に女の情念をテーマに据えて数々の作品を残すことになるが、本作ではその片鱗は感じられない。本作はデビュー作ということもあり優等生的な映画に終止している。

ふたり乗りのバイクで疾走したり、海水浴場ではしゃいだりするデートの場面は、どこかの洋画で見たようなシーンにも思えるが、これまでの日本映画では見られなかった瑞々しさを感じさせる。白黒映画なのが惜しい。ぜひカラーで撮ってほしかったが、監督デビュー作なので仕方ないのだろう。

川口x野添のコンビは初々しいのは好感が持てるが、野添の演技は生硬でこれで本当にいいのかと思わなくもない。後に実際に夫婦になるふたりに注目して見るのがよいのだろう。それにしても野添は当時としては抜群のプロポーションで感心する。彼女は劇中では絵のヌードモデルで家計を支えるという役だったが納得の配役である。

ざっくりいうと演出や演技をひっくるめて「若さっていいね」という映画だった。

余談だが、ふたりが競輪で勝ってデート資金を稼ぐシーンがあり、当時後楽園にあった競輪場が舞台になっている。調べてみると、美濃部亮吉都知事が都営のギャンブルを廃止したことで、1972年に後楽園競輪場は廃止されている。私が上京したころにはすでに廃止されていたので行ったことないが、当時の競輪場の様子を伝える記録映像として貴重かもしれない。

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「くちづけ」:川口浩野添ひとみ

角川シネマ新宿の《大映創立75年記念企画 大映優祭》はもうすぐ終了だが、4月からは《大映創立75年記念企画 男優祭》を上映予定とのこと。こちらも期待したい。

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エレベーターが《女優祭》仕様でした