退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『祇園囃子』(1953) / 浪花千栄子がいいね

新文芸坐の《大映女優祭 in 新文芸坐》で映画『祇園囃子』(1953年、監督:溝口健二)を鑑賞。原作は川口松太郎の小説。当日の併映作は『青空娘』で、フライヤーには「溌剌! 若尾文子」とあった。

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巨匠・溝口健二監督が、京都祇園を舞台に芸妓と周囲の人たちを細部まで描き出した人間ドラマの傑作。奇を衒っていないが無駄のない高密度な映像。撮影の宮川一夫のカメラが冴えている。白黒映画なのが残念。


'' gion bayashi '' - official film trailer - 1953.

祇園ではよく知られた芸妓・美代春(木暮実千代)のもとに、母を亡くした少女・栄子(若尾文子)が舞妓志願でやってくる。栄子があまりに熱心なので美代春は、彼女を引き受ける。舞妓修行を経て栄子はついに舞妓デビューするが、花街の内実を身をもって知りつつ成長していく。

まあ花街を扱った平凡な話ともいえるが、溝口作品としての格調の高さを感じさせるのはさすがというべきか。役人が女を抱かせないと公共事業を業者に発注しないなど、いまではあり得ないようなベタな話だが、売春防止法施行前の時代背景を考えてみないといけないだろう。

劇中に「アプレ」という言葉出てくる。前近代を象徴する木暮実千代と、戦後派というか近代を象徴する若尾文子の対比としても、この話は読み解けるだろう。役人がご執心なのは若尾じゃなくて妖艶な木暮というのも時代かもしれない。いまなら若尾がモテそうだ。

主演者では若尾の溌剌さ、木暮の妖艶さもよいが、お茶屋の女将役の浪花千栄子の演技が光っている。いまこういう役者とさがしても見つからないように思う。

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当日は若尾文子二本立てだったが、本作の若尾はまだ田舎臭く垢抜けていない。初々しくかわいいが、決して美人とは言えない。それでも溝口作品に抜擢されたのは、以後の活躍を考えると、当時目利きがいたのだろう。さすがと言いたい。

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「祇園囃子」若尾文子(左)と木暮実千代