退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『もっとしなやかにもっとしたたかに』(1979) / くたばれ、ニューファミリー!

新文芸坐の《没後20年 藤田敏八 あの夏の光と影は ~20年目の八月》で映画『もっとしなやかにもっとしたたかに 』(1979年)を鑑賞。当日の併映作品は『十八歳、海へ』だったので、森下愛子主演作の二本立て。

もっとしなやかにもっとしたたかに [DVD]

もっとしなやかにもっとしたたかに [DVD]

  • 発売日: 2012/02/02
  • メディア: DVD

妻・君枝(高沢順子)に家出された勇一(奥田瑛二 / 当時は英二) は、カメラマンの夢を捨てて運送屋で働きながら妻を探していた。ふとしたことから16歳の家出娘・彩子(森下愛子)が部屋に転がり込むが、そこに妻が帰ってきて奇妙な共同生活が始まる。

自由奔放でたくましい彩子を演じる森下愛子の蠱惑的な魅力がまぶしい。リアルタイムでは知らないが、当時、青春のアイドルだったとのも納得。もちろん気持ちよく脱いでくれている。

映画は森下が魅力的に撮れてさえいればどうてもいいのだろうが、ニューファミリーを志向する勇一に仮託して、当時の家族像を皮肉を交えて描いている。といっても、風間杜夫が「くたばれ、ニューファミリー」というセリフを叫ぶが、すでにニューファミリーという言葉は死語となっているし、現代の観客にはなかなか伝わりにくいだろう。まあ、どうしても言わせたかったセリスなのだろうが……。

ラストでは、彩子の父親(蟹江敬三)が娘を見つけて、勇一と揉めて殴りつけると、勇一はそのまま車道まで吹っ飛んで車に轢かれてあっけなく死んでしまう。反体制的な雰囲気といい、救いようのない唐突な結末といい。いわゆるアメリカン・ニューシネマの一作。

作品の社会的なメッセージは別にしても、森下愛子の魅力が余すことなく撮れているという一点において映画として成功している。いまの女優はさっぱり脱がなくなったので、後年、ファンが本作のように女優の裸体をスクリーンで見て当時に思いを馳せるということもないのだろう。時代は変わった。

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