退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

凋落する渋谷

ネットで〈渋谷がいつの間にか「池袋化」している理由〉という記事を見つけた。渋谷が凋落していく理由を分析していて興味深いので紹介してみたい。

toyokeizai.net

この記事では、以下の「渋谷凋落3つの要因」を挙げている。

  1. 渋谷を渋谷たらしめていた文化の消滅
  2. ファッション業界の変化
  3. 鉄道の延伸、相互乗入れ

私はファンションには疎いので2番目はピンとこないが、1番目と3番目は納得できる。とくに「文化の消失」については肌で実感している。狭義には「セゾン文化の衰退」と言言い換えてもいいだろう。記事にもあるが、1980年代から1990年代初頭にかけてのセゾングループの仕掛けた、若者文化とアートの街というコンセプトが成功して、渋谷に多くの若者を集めた。

セゾングループ解体後も、しばらくセゾン文化の残滓は残るが、建物の老朽化などにより次第に衰退していった。映画ファンである個人的な趣味で言えば、当時は渋谷のミニシアターで魅力的なプログラムに通ったものだが、その多くが閉館している。いまでは、ユーロスペースシネマヴェーラ渋谷の入っている円山町のビルに出かけるぐらいになってしまった。

また「鉄道の延伸、相互乗入れ」の影響も大きいだろう。ノスタルジーを語っても仕方ないが、東横線渋谷駅の地下化および東京メトロ副都心線直通運は残念だった。旧東横線渋谷駅の地上ホームは本当に素晴らしかったのに……。それと引き換えにできたのが渋谷駅地下の魔窟というわけだ。

まだ再開発の途上なので、「失敗」と断ずるのは時期尚早かもしれないが、なるべくなら渋谷に降りたくないという人も多いのではないか。しかも道玄坂方面から渋谷駅に向かっても、地下からはJRに乗れないという謎の構造になっている。最終的にどうなるのか分からないが、渋谷駅周辺は一度スクラップにして最初から開発した方がいいのではと思ってしまう。

さてタイトルの渋谷の「池袋化」というタイトルに戻るが、さすがに東急グループが再開発しているので池袋よりはかなりマシだろう。池袋は、西武百貨店東武百貨店もずっと昔まま老朽化が進むという緩慢なる死を待っているかのように思える。

それでも正直いうと、渋谷より池袋の方が居心地がいい、ずっと落ち着く。渋谷は若者の街というが、若い頃から渋谷は私にとってなんとなく落ち着かない街だった。映画やイベントがあれば仕方なく出かけていくような街であって、ゆっくりしたい街ではなかった。昔からイベントが終わると新宿に移動して一服するパターンが多かった。

渋谷の再開発が進んでどんな街になるのか分からないが、いい大人が喜んで出かけていくような街にはならないだろう。今後、もし円山町の映画のビルがなくると、渋谷からすっかり足が遠のくような気がする。

渋谷109, Shibuya 109