退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『お吟さま』(1978) / 熊井啓監督初めての時代劇

新文芸坐の《没後10年 巨匠・熊井啓》という熊井啓監督特集で映画『お吟さま』(1978年)を鑑賞。原作は今東光による直木賞受賞作の同名小説。熊井初めての時代劇映画。

お吟さま [VHS]

千利休志村喬)の娘・お吟(中野良子)の胸には、堺の豪商に嫁いだ後も、初恋のキリシタン大名高山右近中村吉右衛門)への思いがひそかに生きつづけていた。やがて離縁されて出戻ったお吟の美貌は、ときの最高権力者・秀吉(三船敏郎)の関心をひき、お吟と利休に悲劇をもたらす。

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たしか小説ではお吟の侍女の語りで進行するのが特徴的だったが、この映画ではそうした演出はない。この映画はお吟の美貌がなくては成立しないが、中野良子が魅力的に撮られていているのは特筆できる。秀吉に見出されるのも納得。中野良子のベストかもしれない。

ラストでお吟が自害を覚悟した後、利休一家で最後の時間を過ごすシーンが圧巻。しみじみと泣ける。

また利休役の志村喬と秀吉役の三船敏郎の縁起の応酬はさすがに見応えがある。ただ秀吉が獰猛すぎるのは個人的はやや違うのではと思ったが、この映画ではそうした演出なのだろう。

今回、惜しいかったのはフィルムの退色していため、せっかくの絢爛豪華な桃山文化の美術が色褪せていたこと。事前にお知らせがあったが、DVD化されていない作品なので一度見ておこうと出かけた。

ちなみに『お吟さま』は、1962年に田中絹代監督によって既に映画化されていて、お吟は有馬稲子が演じている。映画通から田中版の方がいいという話を聞いたので、こちれも一度見てみたいものである。

お吟さま [VHS]