退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『忍者秘帖 梟の城』(1963) / 工藤栄一監督のスタイリッシュな忍者映画

DVDで映画『忍者秘帖 梟の城』(1963年、監督:工藤栄一)を鑑賞。司馬遼太郎直木賞受賞作『梟の城』の映像化作品。主演は大友柳太朗。ちなみに1999年に篠田正浩監督により再び映像化されている。

伊賀忍者・葛籠重蔵(つづらじゅうぞう・演:大友柳太朗)は、伊賀侵攻により多くの仲間を失い織田信長を敵と狙っていたが既に信長は討たれ秀吉の治世となり、生きる意義を見失い隠遁生活を送っていた。そうしたなかかつて師匠から太閤秀吉(織田政雄)の暗殺を依賴され、忍者としての生を全うするべく重蔵は秀吉暗殺に乗り出す。

堺の今井宗久三島雅夫)のもとに向かう途中、宗久の養女・小萩(高千穂ひづる)が現れて、二人は互いに惹かれ合うが、小萩は重蔵の動向を監視するために送り込まれたくノ一だった。

一方、伊賀を裏切り武士として立身出世しようとする風間五平(大木実)は、京の所司代前田玄以菅貫太郎)の配下になってがその出自を見破られ、重蔵と対決するように命じられる。重蔵と五平の対決を軸に、闇に生き闇に死んでいく忍者をリアルに描く。

そうした話だが、50年以上も前の東映時代劇なので、忍者アクションは期待できないかと思いながら見たが、工藤栄一監督のローアングルや引き画を多用する演出により、スタイリッシュな映像に仕上がっていてなかなか面白い。もちろん後年のジャパンアクションクラブのような本格的なスタントは望めないが期待以上に楽しめた。

ただし終盤、重蔵は伏見城の侵入に成功して秀吉と対峙するが、そこで秀吉に簡単に「説得」されて暗殺を思い止まるのはどうも納得できない。忍者としての挟持はどうなったのかと問いたい。

ラストは重蔵と小萩が一頭の馬に相乗りして、仲間の待つ安住の地の向かう。まあ美男美女の銀幕スターの画でまとめるのは、最後に一本の映画を見たなという気分になるが、いまの感覚からするとこれで本当にいいのかと思わなくもない。