退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『家族ゲーム』(1983) / 80年代日本映画の至宝にして森田芳光監督の出世作

東京国立近代美術館フィルムセンターの《映画プロデューサー 佐々木史朗》をいう企画で、映画『家族ゲーム』(1983年、監督:森田芳光)を鑑賞。日本アート・シアター・ギルド作品。

高校受験を控えた次男・茂之(宮川一朗太)の持つ中流核家族の沼田家は家がピリピリしていた。デキのよい長男と違い、茂之は成績も悪く素行にも問題があり、これまで何人もの家庭教師がすぐに辞めていた。そこに三流大学の城南大学7年生の吉本(松田優作)が新しい家庭教師としてやってくる。風変わりな指導をする吉本と一家の不思議な関わりを通して、現代の家族像を浮き彫りにしようとする作品。


家族ゲーム(1983) - 劇場予告編

「最後の晩餐」よろしく家族がずらりの横一列に食卓にならぶシーンや、食事の音をことさらに強調した独特の演出が話題を集めた。森田芳光監督が世に出るキッカケになった作品でもある。

振り返れば、いまではバラバラの家族などは当たり前のことになってしまい、こうした形で家族のテーマにするのも古いかなとも思う。30年も経てば家族のついての考え方もかわるようだ。さらに受験の重要性がかなり低下していることも、30年前とは大きく状況が異なっている。時は流れた。

改めて見ると出演者では、松田優作の飄々とした演技もいいが、宮川一朗太の演技が素晴らしい。私もかつて中学生を教えていたことがあるが、一見バカそうに見えて実はやれば出来る子という雰囲気がよく出ている。

ほかには沼田家の主婦役の由紀さおりがよかった。茂之の母という重要な役。夫役の伊丹十三が上手いのは当然としても、妻役の由紀が驚くほど上手いので驚いた。

80年代の日本映画の金字塔と言うと大げさかもしれないが、一度は見ておくべき名作として強くオススメしたい。30年前の映画だが、森田芳光監督も松田優作伊丹十三といった主要キャストもすでに鬼籍に入っているのはなんとも惜しい。

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