退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】高田かや『さよなら、カルト村。 思春期から村を出るまで』(文藝春秋、2017年)

前書『カルト村で生まれました。』が面白かったので、村で過ごした13歳から19歳までの青春期を描いた、この続編も読んでみました。「カルト村」で生まれ育ち、19歳のときに村を出た筆者が少女時代を振り返って描いた「実録コミックエッセイ」の後編にあたります。

さよなら、カルト村。 思春期から村を出るまで

さよなら、カルト村。 思春期から村を出るまで

タイトルにある「カルト村」とは、「所有のない社会」を目指す農業を基盤としたコミューン(生活共同体)ですが、宗教性はないようです。

しかしオウム事件をきっかけにコミューンに対する世間からの風当たりがつよくなり、コミューン自体も変化を求められる様子は興味があります。が、脱税容疑などの対応に追われる指導部の様子が描かれるわけはなく、あくまでも末端の構成員の視点からの描写にとどまっています。そのあたりはやや物足りないかもしれません。

また子どもたちが村を出るかどうかの選択を迫られるシーンも印象深い。「言われたことだけやっていれば、お金の心配をしなくて暮らせる」という生活を選ぶか、または村を出て自立する道を選ぶかという岐路です。

筆者は村から出ることを選択して、これまで経験したことのない一般社会の荒波に揉まれます。が、意外に順応力が高くたくましい姿に驚きました。その後、なぜか「出合い系サイト」でいまの旦那さんと知り合います。え、と思いましたが、ひどい人に当たらなくて本当によかった。

前編後編を通読して、昨今のむき出しの資本主義の対立軸として、こうしたコミューンもありかもしれないと思って読んでいましたが、やはり前時代的な体罰や歳の離れた男性との「調整結婚(!?)など人権無視が横行する集団は社会に広く受け入れられないだろうと思いました。

見たことがない世界を描くという点では、満点を差し上げたいコミックエッセイで、驚きの連続ながら楽しく読めました。今後、筆者がどんな分野のコミックエッセイに挑戦するのでしょう。期待したいと思います。

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