退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】山之内幸夫『山口組 顧問弁護士』(角川新書、2016年)

昨年観たドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』で著者に興味を持ち。本書を手に取ってみた。山口組の顧問弁護士を長きにわたって務めて、ついに弁護士資格停止となった山之内幸夫氏の手記。

山口組 顧問弁護士 (角川新書)

山口組 顧問弁護士 (角川新書)

長年にわたり暴力団の顧問弁護士を務めてきた著者ならではの生々しいエピソードが多く、これは他では読めないだろう。ただし客観的な視点とは言えず、どちらかと言えば山口組に近い立場で書かれているので、そこに引っかかる人もいるもいるだろう。暴力団を貧困の犠牲者として捉えているフシもある。

語りかけるような親しみやすい文体なのだが、冒頭から「山口組分裂の背景」というバッググラウンドの説明から始まるため、組織名や人名などの固有名詞が延々と続き、読んでいてもあまり頭に入ってこない。第三章から筆者の弁護士活動が登場して面白くなってくるので、そこまでは辛抱を強いられるかもしれない。

読み始める前は本書は筆者の自伝的な読み物かと思っていたが、期待に反して29歳で弁護士登録をする前の生い立ちには触れらていない。弁護士を志す動機などについても語ってほしかった。

また上記のドキュメンタリーで気になっていた弁護士資格を失う経緯についても十分に触れられていないのも残念。

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