退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】高田かや『カルト村で生まれました。』(文藝春秋、2016年)

「カルト村」で生まれ育ち、19歳のときに村を出た筆者が少女時代を振り返って描いた「実録コミックエッセイ」。ユニークな少女時代を過ごした筆者の内面が伺える作品です。

カルト村で生まれました。

カルト村で生まれました。

タイトルにある「カルト村」とは、「所有のない社会」を目指す農業を基盤としたコミューン(生活共同体)で宗教性はないようです。タイトルからきっと教祖様が登場するぞと思い本を手に取りましたが肩透かしでした。タイトル詐欺の疑いあり!

このコミューンでは子どもは親から離れて共同生活をします。そこはビンタ、正座などの体罰が当たり前の子どもにとっては過酷な世界。今なら完全にアウトかと思いますが、当時でも犯罪スレスレだったのではないでしょうか。

そこではなぜか食事は昼夜の2食。子どもたちは朝食抜きで登校するので、空腹のあまり気分が悪くなる生徒が続出。子どもが通う学校がコミューンのことを忌々しく思うのも無理からぬところ。当事者には深刻な問題でしょうが、傍観者としてはちょっと面白いです。

またコミューンと一般社会と間のトラブルや摩擦の様子はとく興味深く読みました。いまでは、こうした施設が近くにあるだけでも周辺住民は抵抗があるかもしれません。保育園ですら迷惑施設の烙印を押されるご時世ですからね。

さて筆者はコミューンを出たあと、パートナーと知り合い仲良く暮らしているようで何よりです。このようなユニークな体験を題材にマンガに描くこと勧めてくれたパートナーは度量が大きい。すごいなあと感心しました。

あとコミューンではマンガ禁止だったとのこと。少女時代にマンガに触れる機会はなかったのに、なぜコミックエッセイを描こうと思ったのか、影響を受けたマンガ家はいるのか。興味は尽きません。

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