退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『赤穂城断絶』(1978) / 意外にフツーだった深作欣二監督の忠臣蔵

DVDを借りて映画『赤穂城断絶』(1978年、監督:深作欣二)を鑑賞する。映画『柳生一族の陰謀』(1978年)の大ヒットを受けて、 深作欣二萬屋錦之介の組み合わせで忠臣蔵を題材として製作された作品である。

当初、吉良上野介の視点から忠臣蔵を描く構想があり、錦之助吉良上野介を演じ、大石内蔵助金子信雄が演じるプランがあったという。しかし錦之助は吉良役を拒否し、従来どおりのオーソドックスな忠臣蔵となった。配役はもちろん大石役を錦之助が演じ、なぜか吉良役を金子が演じることになった。

大石役はともかく、高家肝煎筆頭の吉良役を金子信雄が演じるのはコントのようだがこれでよかったのか。また瑤泉院三田佳子が演じているが、いくらなんでも年を取りすぎているように思った。

この映画は上映時間160分と長尺であるが、畳替えなどお馴染みのイベントが描かれず、浅野内匠頭西郷輝彦)が松の廊下の刃傷を起こすシーンから始まる。浅野が刃傷に及ぶ経緯も忠臣蔵の楽しみのひとつなので、この点はやや残念だった。

オーソドックスな忠臣蔵ではあるが、討ち入りのシーンは実録調というか集団抗争劇を取り入れたアクションシーンが満載で深作監督の面目躍如と言える。これまでの忠臣蔵では見られなかった新機軸を打ち出している。とくに不破数右衛門 (千葉真一) と小林平八郎 (渡瀬恒彦) の一騎討ちは名シーンで時代劇の醍醐味を堪能できる。


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映画『柳生一族の陰謀』が秀忠が家光の側近に毒殺されるというトンデモ時代劇だったのと比べ、本作は意外にフツーの忠臣蔵であり興行成績は『柳生一族の陰謀』に遠く及ばなかったという。いま見ると錦之助の重々しい演技も貫禄が感じられ、討ち入りのチャンバラも見応えがあって悪くはないのだが、当初の企画にあった吉良の視点からみた忠臣蔵もぜひ見てみたかった。